溝口敦が斬る
山口組内乱の実相


溝口 敦 (みぞぐち・あつし)  ノンフィクション作家、ジャーナリスト

1942年東京生まれ。主として日本社会の暗部である暴力団や新宗教に焦点をしぼってジャーナリスト活動を続ける。『食肉の帝王―巨富をつかんだ男浅田満』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞。『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』『細木数子 魔女の履歴書』(ともに講談社プラスアルファ文庫)、『山口組動乱 2008~2011 司忍六代目組長「玉座復帰」の光と影』(竹書房)など著書多数。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

»最新記事一覧へ

山口組が8月末に分裂した。山口組としては31年前、一和会(山本広会長)が離反、分裂して以来のことである。

 山口組本家(本部・神戸市)は70人余の直系組長を擁していたが、今回の分裂劇ではそのうち13人が叛旗を翻し、「神戸山口組」を別に立てた。反乱軍には組内最多の組員数を誇る山健組・井上邦雄組長(山口組の若頭補佐だった)、長らく山口組で総本部長を務めた宅見組・入江禎組長、かつて若頭補佐だった侠友会・寺岡修会長などの有名ヤクザが含まれている(山口組は8月27日、これら13人を絶縁・破門処分にした)。

「俺んとこは水屋でも雑貨屋でもない」
カネ集めの激しい六代目

 袂を分かった主な理由は今の六代目山口組が行っているカネ集めの激しさにある。直系組長たちは毎月約100万円を月会費名目で本部に納めている。その他、本部によるミネラルウオーターや日用品の半強制的な押し付け販売もあり、直系組長である以上、最低でも毎月50万円は買うことになっている。

神戸市街(iStock)

 たとえばミネラルウォーターである。1ケース24本入りが3120円(1本が130円の計算になる)、これを最低でも10ケースは買うという縛りを掛けていた。つまり毎月240本以上のペットボトルが各直系組に送られてくる。小売り店が仕入れるほどの量でありながら、なぜか値段は自販機並みに高い。直系組は組事務所に積み上がる水や雑貨の段ボール箱に「俺んとこは水屋でも雑貨屋でもない」と嘆息することになったわけだ。

 山口組本部には直系組長たちが差し出す会費だけで毎月約7000万円が集まった。このうち約3000万円が月々、六代目司忍組長に渡っていたとされる。年間にすれば3億6000万円。その他、直系組長たちが拠出して中元や歳暮の時期、また司組長の誕生日祝いなどで各1億円ぐらいを集めて、司組長には年6億円ぐらいを渡していたらしい。また司組長は友好団体のうち双愛会、共政会、福博会、東亜会を後見し、これら団体からも中元や歳暮の時期に現金を贈られているようだ。なんやかやで年間10億円前後を集金していると見られる。

 こうした収入は正確に税務申告され、納税されているのか。実は神戸山口組側の奥の手として、警察や税務署に対する証言の提供があるとされる。どれほどデータ的に裏付けできるのか疑問だが、少なくとも司組長の収入を熟知する立場にいたのはかつての山口組総本部長・入江禎氏だった。入江氏は前記したように神戸山口組に移っているから、司組長に遠慮する必要はないことになる。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「WEDGE REPORT」

著者

溝口 敦(みぞぐち・あつし)

ノンフィクション作家、ジャーナリスト

1942年東京生まれ。主として日本社会の暗部である暴力団や新宗教に焦点をしぼってジャーナリスト活動を続ける。『食肉の帝王―巨富をつかんだ男浅田満』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞。『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』『細木数子 魔女の履歴書』(ともに講談社プラスアルファ文庫)、『山口組動乱 2008~2011 司忍六代目組長「玉座復帰」の光と影』(竹書房)など著書多数。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍