WEDGE REPORT

2015年9月21日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 習近平政権の代名詞ともなった「反腐敗キャンペーン」。習近平が指導者となって以降、一日500人以上が処分され続ける闘争の影響は政治分野にとどまらない。経済的なダメージが懸念され、目下、指導部の悩みは既得権益を奪われた官僚らの静かな抵抗だ。

 「官僚の“不作為”というものですよ」

 と語るのは党中央機関紙記者だ。

 「役人らは面従腹背で、裏で仕事をサボタージュしています。賄賂も宴会もダメなら仕事もしないとね。彼らは9時~5時できっちり帰りますが、執務時間中も政治学習と称して推薦図書を読むふりをして小説を読んでいます。これがいま公共事業の許認可の遅れや手続きの停滞となって跳ね返り、行政の効率を大きく落としているのです」

 2012年から経済の構造転換を進める中国は公共事業の依存度を下げてきたが、それでも景気刺激策としての公共事業のウエイトはまだ15%前後はある。景気調整の刺激策は号令一下タイミングよく機能してこそ効果を発揮するのだが、不作為によって妨げられれば、投資金額に見合った効果は得られない。中国経済にとってはボディブローのような負の効果となる。

有効手段なき官僚の“不作為”対策

 指導部も“不作為”に対しては神経質にならざるを得ない。14年の初め、国務院は不作為を専門に監視する「督査隊(組)」を組織し、6月初旬、全国16省・市及び27機関に派遣し実態調査を行った。その結果、「一部の地域・機関で、やはり不作為が非常に深刻化している」ことが分かったのである。

 7月16日の常務会で報告を聞いた李克強首相は、「不作為も新たな腐敗」と批判。「凡庸な政治、怠惰な行政も同じく腐敗の一種で、国民に対する究極の無責任だ」と厳しい言葉で怒りを露わにしたとされる。指導部の苛立ちは、「党の喉と舌」である官製メディアを通じて伝えられ、『中国青年報』などは、「経済を人質にしても反腐敗キャンペーンを止めることなどできない」と警告を発したほどであった。

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