チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年9月15日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 9月3日に行われた「中国人民抗日戦争勝利70周年」の記念式典。その目玉の一つ、閲兵式のため人工的につくり出された青空、いわゆる“閲兵ブルー”は80年代の北京の秋晴れを思い出させる完璧な晴天だった。

 「昨年11月にはAPECのための“APECブルー”が話題になりましたが、今回は世界陸上からの徹底した天候管理に加え、8月20日からは北京から遠く離れた山東省の工場まで一時的に停止させられました。しかも2299社という大規模な範囲でしたから、青空の質が違うと話題になりました。しかし、休業を強いられた工場には政府からの補償は一切なし。そのしわ寄せが労働者に向かい、現地では多少のもめ事も起きていたようですが……」(北京の夕刊紙記者)

独裁的な社会主義国であることを人々に思い出させた

パレードの前夜、天安門近くの自警団(Getty Images)

 “閲兵ブルー”を作り出した強引なやり方をはじめ、式典成功のために8月の末から中国が設けたさまざまな規制は、この国が依然、独裁的な社会主義国であることを人々に思い出させた。

 「交差点ごとに中国人民武装警察部隊の警官が立ち、警備に当たるという状況は市の中心部だけでしたが、郊外でもぬかりはない警備体制でした。例えば、人々の動向をうかがい、上に密告することが仕事であった居民委員会のOBたちが中心となってつくられた街道委員会のメンバーたちが、人々が寝静まった夜中にもグループで担当地域の見回りを行い、駐車されているすべての車の持ち主を確認する作業を丹念にやって回っていました。みなロボットのように党に忠実な人々ですから、不明な車が入り込む余地などありませんでしたね」(北京市の住民)

 パレード会場となる天安門周辺はさらに厳しい警備体制が敷かれていた。そのことは警備を担当する組織の多様さにも如実に表れていた。

 まず警備の中心を担う中国人民武装警察部隊(以下、武警)の隊員が天安門に近づくに従い増え、制帽・制服のスタイルから、迷彩服に小銃を持った兵士の数が多くなり、緊張感を高めてゆくのだ。

 次に目に付くのは胸に「中華人民共和国警察」のエンブレムを付けた公安だ。公安にはブルーのユニフォームと、真っ黒の制服の特別警察(以下、特警)があり、背中に英文字で「SWAT」と記された特警が一際強い存在感を放っているのがよく分かった。

 続いて頻繁に見かけるのが公安の下に置かれ、都市の軽微な治安維持や美化・管理などを担う城管である。水色と白のツートンに「城管執法」と書かれたパトロールカーのほか、原付にまたがる姿も多く見られた。

 このほか、普段は部隊に属しながら急きょ公安の下に派遣されて治安維持に当たるさまざまな組織が見つかる。驚くべきは、その組織の数の多さである。

 彼らはみな全身真っ黒なユニフォームだが、背中と肩に付けられたマークが違っている。「安AN BAO保」(肩に執勤)、「特TE QIN勤」(肩には国旗のマーク)、「保BAO QIN勤」(肩に国旗)などがそれに当たるが、なかには「東城民兵」と書かれたユニフォームもあり、このことは今回の警備には東城地区にいる退役軍人まで動員されていることを示していた。

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