9月27日、国立代々木競技場体育館(東京都渋谷区)で「第21回 東京ガールズコレクション2015 AUTUMN/WINTER」が開催された。水原希子、桐原美玲、香里奈ら総勢100名の人気モデルによるファッションショーを中心とした4時間にわたるステージに集まった来場者数はのべ32800人。11年目に入り、日本のガールズカルチャーを牽引する立場となった「TOKYO GIRLS COLLECTION」の商標権を8億円で買ったディー・エル・イー(DLE)社の企業戦略を追った。
6月8日、キャラクタービジネスを展開するディー・エル・イー(DLE)は、ドリームインキュベータ傘下のファンドが保有する「TOKYO GIRLS COLLECTION」(以下、TGC)の商標権を8億円で取得。7月1日には株式会社TOKYO GIRLS COLLECTIONを設立した。
8億円という高額で商標権を売買するのを耳にすることは少ない。知的財産権(IP)ビジネスに詳しい骨董通り法律事務所の福井健策弁護士も「米アップルがiPad(アイパッド)の商標権をめぐり中国での訴訟で和解金を支払った際の6000万ドル(当時で約48億円)が1つの例だが、あまり聞いたことはない」 と語る。知財ファンドが商標権に出資していたのは5億円。つまりDLEは、3億円分ののれん価値をTGCに見出したことになる。
TGCは05年8月から年2回開催されている、F1層(20歳から34歳までの女性)をターゲットとしたファッションイベントだ。15年2月に開催されたイベントでは、のべ約3万3700人が来場しており、 「アパレルブランドが一般の女の子たちに、直接自らのファションを発信できる場」だと運営するF1メディアの村上範義社長は語る。世界的に有名なパリコレクションやミラノコレクションはB to Bでトップデザイナーが新作を発表する場であり、消費者向けではない。
F1メディアは年商30億円程度。毎回TGCの高い集客力、発信力を見込んで多くのスポンサーが集まるが、開催には億単位のコストを惜しみなくつぎ込んでおり、イベント自体は大きな利益を生まないという。むしろ、TGCが有する50億円超ともいわれるパブリシティ効果(広告効果)やモデル・企業とのネットワークを活用した広告代理店業務が主な収益源だ。
今年でTGCは10周年。順調に見えるが、F1メディアの弱みは自身で商標権を持っていないことだ。元オーナーが資金繰りのために売却してしまったからで、その後経営を引き継いだ前オーナーも、資金源について週刊誌報道を受けるなど、資金面でもイメージ面でも苦しい時期が続いた。
村上社長は、TGC創設時からのメンバー。様々な逆風のなか、運営に取り組んできた。TGCをさらに拡大させるには意思決定を集中する必要がある。村上氏は自ら数億円の資金調達を行ってMBO(経営陣による買収)を行った。しかし、商標権まで手を出すのは資金的に困難だった。このまま商標権を知財ファンドが保有し続ければ、複数の出資者の意見を汲み取り続ける必要があり、意思決定の集中はかなわない。そこに現れたのが、DLEの椎木隆太社長だった。
DLEは、かつてインターネット上のオタクたちの「お遊び」だったフラッシュアニメ(米Adobe社のソフト、FLASHを用いたアニメ)を武器に、数カ月・1000万円かかるアニメ制作を、1カ月・数十万円で質良く仕上げ、ネットを活用して大量に拡散。一般的にアニメの著作権は原作者に帰属するが、DLEは著作権を保有することに拘り、拡散後のキャラクタービジネスでマネタイズしていく。