崩れかかる
スポーツエリート校ビジネスモデル


村田夏友 (むらた・なつとも)  フリージャーナリスト

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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第97回全国高校野球選手権青森大会では、三沢商業高校が29年ぶり2回目の甲子園出場を決めた。青森県の公立高校としては19年ぶり。全員地元出身のメンバーが、私立を次々と撃破する姿に、地元高校野球ファンは熱狂した。

 「各地の野球エリートを特待生として入学させている私立に、地元の公立は太刀打ちできない」という考え方は根強い。学費を安くし有能な生徒を集めて知名度を高める一方、その知名度によりひきつけられた多くの一般生徒から多くの学費を徴収し儲ける―。スポーツエリート校ビジネスモデルの前に、公立高は敗れ去ってしまう。

有望な野球部員に対しスポーツ特待奨学金を
支給していたことが発覚

 2007年4月、専修大学北上高等学校が日本学生野球憲章に反し、有望な野球部員に対しスポーツ特待奨学金を支給していたことが発覚。当時の日本学生野球憲章では「選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない」と規定されていたことから問題となったのだ。

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 その後、専修大北上の例に端を発し、高野連が調査に乗り出したところ、377校(全体の9.0%)が野球特待生を選手登録させていたことが判明。しかも、そのうちの116校は野球部における特待生比率が50%を超えていた。

 「野球特待生完全廃止」を視野に、高野連は有識者会議等を開催し議論を深めていったが、特待生による常勝軍団を作りあげていた私立高校からの反発は激しく、特待生を事実上認める流れができた。

 2010年の改定では「部員は、野球部に現に在籍しているか否かを問わず、部員であることまたは学生野球を行うことに対する援助、対価または試合や大会の成績によって得られる褒賞としての金品を受け取ってはならない」としているが、「奨学金制度に基づく金品の貸与または支給を除き、加盟校から経済的な特典を受けてはならない」という文言が付け加えられた。

 つまり、野球をすることを理由に奨学生とすることはできないが、経済的事情に加え他の生徒の模範となるような生徒であれば奨学生をすることができると憲章で認めたことになる。

 もっとも、専修大北上事件時の有識者会議が野球奨学生数のガイドラインとして提示した1学年5人という縛りは少なからず効いている。といっても、夏の大会であれば最大15人。全国からの野球留学生(特待生)で守りを固める私立から勝利するのは今でも難しい。だからこそ、公立校の甲子園出場は地元を多いに盛り上がらせるのである。

 逆に、私立の立場からすると敗退した場合は悲惨である。野球に限ったことではないが、スポーツエリート校を名乗る多くの私立高校は、多額の資金をつぎ込み充実した施設を設置・維持し、また、授業料の減免をうたい有望な生徒を集めている。それが、結果を出せなかったとなると宣伝効果どころか、逆に評判を落とすことすら懸念される。評判が悪ければ、地元生徒が集まらなくなる。これは、もはや甲子園云々の話ではなく、学校法人の経営問題である。

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