WEDGE REPORT

2015年10月8日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 10月5日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が一応の合意に達した。およそ1800品目が参加12カ国間で関税撤廃となる、まさに太平洋を囲む諸国での一大自由経済エリアの構築だ。米国では来年連邦議会下院の承認を受けた後正式の発足となるが、国内ではオバマ政権の「歴史的功績」とする声が高い。

6日、TPPの大筋合意を受けて国内の農業関係者と話し合いの場を持つオバマ大統領(GettyImages)

 ただし、TPPにより米国が経済的恩恵を受ける分野は限られている。「勝ち組」とされているのは医薬品メーカー、ハリウッドなど、知的所有権の分野で影響力を増す業界だ。

 一方で自動車、鉄鋼業界などは以前から根強くTPPに反対してきた。今回の合意を受け、全米鉄鋼労働者組合のレオ・ジェラルド氏は「TPPは米国労働者にとって不利な協定であり、下院は拒絶すべき」と主張する。関税撤廃により安い鉄鋼製品がアジアから輸入されることにより、米国の鉄鋼業界そのものが危機を迎えるという懸念がある。

 自動車業界も同様に、安い自動車部品の輸入増で米国の部品産業が脅かされる、日本や韓国製の車の輸入が増える、との見解を示していたが、フォード自動車は合意に際し「本当の意味でのオープンマーケットで公平な競争が確約されるならばTPPをサポートする」と声明を出した。

 ただし「合意内容は、現在我々が直面する最大の貿易障壁、すなわち意図的な為替操作に踏み込んでいない」との批判も忘れていない。ドル高の現在、米の輸出産業は不利な立場にあり、特に米自動車業界は以前から「1ドル=100円が適正為替」と主張している。

 同様に全米農業組合のロジャー・ジョンソン氏も「公平な貿易のためには為替問題がもっと議論されるべき」とTPP合意内容を批判した。

 環境分野では、全米最大の環境保護団体であるシエラ・クラブのマイケル・ブルーン氏が「石油メジャーが今後輸出拡大を試み、環境面から論争となっているシェールガスのフラッキングがさらに拡大する。TPPは地球温暖化を促進させる厄災となる」と激しく非難。

 また医療面では国境なき医師団から「発展途上国での医療費が増大し、米医薬品業界が潤う反面で予防できる疾病の蔓延や死亡者増大を招きかねない」との懸念を示した。

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