2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月22日


質疑応答の要点は次の通りです。

 すなわち、マケインが「“12カイリ以内”で航行の自由作戦を最後に実施したのはいつか」と尋ねたのに対し、シェアー国防次官補は、2012年のことである、と答えた。また、ジャック・リード筆頭委員が「人工島の上を飛行したのはいつか」と聞くと、ハリス司令官は、「最近は、当該地域上空の飛行はいかなる形でも行っていないが、数あるオプションの1つとして机上に上がっている」と答えている。ハリスは「太平洋軍として、国防長官には南シナ海におけるあらゆる可能性を含む軍事オプションを提示しており、指示を受ければ作戦を実施する準備ができており、指示を待っているところだ」とも言っている。

出典:John S. McCain, Harry B. Harris & David B. Shear,‘Maritime Security Strategy in the Asia-Pacific Region’(United States Senate Committee on Armed Services, September 17, 2015)
http://www.armed-services.senate.gov/hearings/15-09-17-maritime-security-strategy-in-the-asia-pacific-region


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 この公聴会は、南シナ海問題、北朝鮮、米国の海洋法条約未批准、米中の軍事力比較など、多岐にわたりましたが、最も注目を集めたのは南シナ海の係争地域12カイリ以内で、米国が「航行の自由作戦」を行うかどうかについての質疑応答でした。「航行の自由作戦」とは中国が建設を進めている人工島は海洋法でいう島ではないので、12カイリ以内でも自由航行ができることを示すため、米国が船舶を航行させる作戦のことです。

 5月末カーター国防長官がシャングリラ会議で、中国の島嶼埋め立てに強く抗議し、米国はどこでも航空機を飛ばし、船舶を航行させる、と述べたので、「航行の自由作戦」の実施は時間の問題と考えられましたが、今回の公聴会で、太平洋軍のハリス司令官は、オプションをホワイトハウスに提示しており、今検討されていて、支持を受ければ作戦を実施する準備ができており、指示を待っているところである、と述べ、「航行の自由作戦」の現状が明らかになりました。

 南シナ海での「航行の自由作戦」の実施は、中国の主張は認められないとする米国の立場からすれば当然のことですが、中国が自らの主張を変えるとは思われず、作戦が実施されれば軍事衝突の危険があり、オバマ政権が躊躇しても不思議ではありません。

 米中首脳会談後も、軍事衝突のリスクを考えて実施にはなかなか踏み切れないとすれば、中国の立場を事実上黙認することになりかねず、また中国の行動は許せないと主張してきた米国のクレディビリティの問題にもなり、オバマ政権は苦境に立たされることになるでしょう。

  
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