中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年10月23日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 安倍首相が官民対話で経済界代表に積極投資を要請した。これに対して、第4次産業革命に対応する投資の必要性が認識された一方、設備投資は個別の企業経営判断との反応があったとの報道である。

 直近の内外経済では不透明感が高まっており、現在は企業行動が慎重になる局面にあると言える。中国経済の減速や資源安もあり、新興国経済に元気がない。一人勝ちを続けるアメリカ経済もドル高、原油安が貿易などに悪影響を及ぼしており、年内と見られてきた利上げにも先送り観測が増加している。国内景気を見ても、円安は続いているものの低調な海外経済を映じて輸出は伸びていない。

 一方、不透明なときに先行した企業が勝ち組となる事例にも事欠かない。加えて、企業の内部留保はいままでになく高水準であり、インダストリー4.0にTPP実質合意といった新たな動きも目白押しである。競争力強化を狙った企業買収も内外で大きく盛り上がっている。

 昨年の政労使会議は企業利益の賃金への還元に焦点があったが、今年の官民対話での投資要請は企業収益を今後への対応に充てることに重点を置くものと言える。確かに内外景気は不透明だが、今は慎重ではありつつも先行投資を怠ってはならない局面にあると言えよう。

企業の財務体力は過去最高

 2014年度の企業収益は、統計開始以来の最高水準となっている(図表1)。今年の4-6月期も、過去の4-6月期と比べれば同じく史上最高利益である。一人当たり経常利益額も、中小企業を除き史上最高となっており、その中小企業も歴代第2位と高い。

 この好調な企業収益の背景として、特に今年は原油安要因も大きい。今年1-8月の石油・LNG輸入を昨年同期と比べると、数量は大して減少していないのに金額は約5兆円も減少しており、その分国内の購買力が増え、企業収益に寄与する計算となる(図表2)。

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