中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年8月24日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 中国経済の減速は、値動きの荒い上海株価や人民元切り下げなどとともに世界経済の懸念材料となっている。相次ぐ金融緩和措置や通貨切り下げなどで、中国政府も景気を支えなければ今年の成長目標7%達成が危ぶまれかねないとの危機感を持っているとも窺える。

 確かに、最近の中国経済はあまり芳しくない。今年4-6月期のGDP成長率は、1-3月期と並んでリーマンショック直後以来最低の7%成長に止まった。また、鉱工業生産や小売売上高の伸びは相対的に鈍化しているし、消費動向指数も低位にある。

 しかし、中国経済が大きく減速しているとしても、異常な事態に陥っているようには見えない。中国経済が移行期にあることがその理解の大きな鍵となる。日本が高度成長期から安定成長期に移行した当時と現在の中国経済は類似しており、比較することで見えてくる部分がある。

5%程度の安定成長に向かう中国経済

 中国経済が移行期にあることについてはWedge Infinityの拙文(「世界経済は停滞していない~潮流変化の元はアメリカ・中国の新たな経済構造~、2014/10」)で示したところだが、世界一の工業生産国そして輸出国となった中国が、今後とも投資や輸出主導で10%以上の経済成長を果たすのはもはや困難となっている。この点を踏まえ、中国政府も量から質を重視し、7%程度の成長を目指すと言明しているところでもある。

 では、現在の中国経済はどの程度の成長力があるのか。図表1は、中国の購買力平価での一人当たりGDPを日本、台湾、韓国と比べたものである。このグラフから、現在の中国の一人当たりGDP(購買力平価ベース)は85年当時の日本、93年当時の台湾、96年当時の韓国と近い水準であることが分かる。

【図表1】一人当たりGDPの推移(購買力平価ベース)
(出所)IMF
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 85年当時、日本はすでに高度成長が終了して5%程度の安定成長に移っていた。93年の台湾、96年の韓国でも、高度成長期は終了し、5%の安定成長期に移行途上の時期に当たっていた(図表2)。

【図表2】台湾と韓国の実質経済成長率 
(注)平均成長率は1972-89年、1990-96年、1997-2008年、2009-2014年それぞれの年平均 
(出所)台湾行政院(DGBAS)、韓国銀行
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