2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月30日

 シコルスキ元ポーランド外相とヴィケ・フライベルガ元ラトビア大統領が連名で9月28日付の米ウォールストリートジャーナル紙に寄稿し、ロシアに隣接する諸国が持っている安全保障上の危機意識を鮮明にするとともに、NATO諸国が結束し、断固たる姿勢でロシアに立ち向かわなければ、ヨーロッパの将来は危ういと警鐘を鳴らし、NATO再強化待望論を展開しています。

iStockより

 すなわち、NATO諸国は、来年予定されているNATOワルシャワ・サミットに向けて新しい対ロシア戦略を構築しなければならない。この際、冷戦期と同様にロシアに隣接する第一線の諸国を防衛するということが重要である。

NATO諸国は結束強化を

 現在NATOは、バルト諸国における頻繁な航空哨戒によってロシア機による領空侵犯を許さず、また、即応度の極めて高いNATO緊急展開や英国主導による陸海空軍統合の遠征部隊を擁して領域防衛に備えるなど正しい方向に向かっている。また米国も欧州離れが批判される中、装甲部隊などの重兵力を欧州に再展開し、F-22戦闘機をポーランドに短期展開させるなどによってこれを支援する姿勢を示している。

 しかしながら、ロシアのウクライナに対する行動、軍事力の増強、バルト海周辺における攻撃的な姿勢などを勘案すれば、これらの施策は不十分であり、クレムリンを後退させるまでには至っていない。

 NATOの中で、安全保障を提供する側に立ち、域外任務にも積極的に参加してきたラトビア及びポーランドの二国の立場から言えば、NATOとして次の5点を重視すべきである。

(1)バルト諸国及びポーランドに対してNATO諸国軍を前方展開させるべきである。大規模な部隊の恒久的な駐留までを望む訳ではないが、燃料・弾薬や重装備を前方地域に備蓄し、あるいは比較的長い期間のローテーションで兵力を前方展開しておくことは、ロシアの脅威に直面する地域にとって有意義である。

(2)バルト諸国及びポーランドの防衛を孤立させるべきでなく、NATO全体として直ちに発動できる戦略計画を持つべきである。NATO加盟国のいずれに対する攻撃もNATO全体に対する攻撃としてとらえるべきであり、NATO加盟国全てが対応すべきである。

(3)ロシアによる陸上・海上・空中の領域やサイバー空間における挑発に際して必要な軍事的な対応をとることに関して、NATOとしてあらかじめ政治的な認可を得ておくべきである。

 NATO諸国として、通常及び核兵力の堅固な態勢を備えることにとどまらず、ロシアの宣伝戦、政府転覆活動、スパイ活動、エネルギー供給に関する脅迫などに対してもより強力に結束することが不可欠である。

 ワルシャワ・サミットを機に、スウェーデン及びフィンランドとの協力関係を強化すべきである。

 ロシアのクリミアに対する攻撃、ユーロ圏における国内問題、予測をはるかに上回る難民流入などにより、国際的な規範に基づく欧州の秩序は危機に立たされている。一方、欧州を救う余地はまだ残っており、NATOワルシャワ・サミットはこれを実現するための絶好の機会である、と述べています。

出 典:Radek Sikorski & Vaira Vike-Freiberga‘In Search of New Answers for NATO’(Wall Street Journal, September 28, 2015)
URL:http://www.wsj.com/articles/in-search-of-new-answers-for-nato-1443464949


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