安保激変

2015年12月11日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 このままでは沖縄県知事が辺野古移設反対の先頭に立つ中、移設作業が進むという、日米同盟の維持にとって極めて好ましくない構図が定着してしまう。地元が米軍基地反対の声が強めれば強めるほど、中国や北朝鮮には日米同盟が弱体化していると見えるだろう。中国は尖閣諸島での示威行為を強め、北朝鮮も核ミサイルの恫喝をさらに行えば、日本の安全保障環境は一層厳しくなる。

 代執行訴訟は日本政府が有利だが、他方で沖縄のさらなる反発を招くだろう。代執行後に、どのように沖縄との関係を修復しつつ辺野古移設を進めるかについて考えておくべきだ。

関係者が積み重ねてきた知恵と努力の結晶

 翁長知事は、県知事選や衆院選、名護市長および市議会選挙の結果、辺野古移設反対が沖縄の「民意」だという。しかし、翁長知事のいう「民意」に移設で直接影響を受ける辺野古の住民の声は含まれているのだろうか。96年に日米両政府が普天間の移設で合意して以降、移設先として自ら名乗りを上げたのは辺野古の住民だけだ。それは苦渋の決断だったに違いない。しかし、だからこそ、辺野古から山を隔てた名護市中心部の住民の声よりも、辺野古の住民の決断がまず尊重されるべきだ。このため、政府が沖縄県を介さず、辺野古3地区の要望を直接聞くようになったことは、「民意」を聞くという意味で正しい。普天間飛行場の周辺住民も安全への不安から移設を求める声が強く、普天間の危険性の除去は必ず行わなければならない。

 そもそも、辺野古への移設計画は、抑止力を維持しつつも、普天間の危険性の除去と固定化の回避のために、関係者が積み重ねてきた知恵と努力の結晶である。翁長知事は米軍占有施設の74%が沖縄に集中していることを批判するが、普天間の返還と嘉手納より南の施設の返還で、この状況はある程度緩和される。それは沖縄本島への米軍基地の集中という現状を根本的に変えるものではないが、市街地のど真ん中に位置する普天間の危険性の除去につながるし、跡地利用は沖縄経済振興の可能性を広げることにもなる。日米両政府は12月4日に嘉手納より南の米軍施設の前倒し返還に合意したが、目に見える形での同様の負担の軽減を続けて行くべきだ。特に、沖縄本島北部の新興に貢献できるよう、交通インフラの改善につながる施設返還を優先するのが望ましい。

 日米両政府は、早ければ2022年度の普天間返還を予定している。日本政府は、埋め立てを承認した仲井眞前知事の要請に基づき、2019年2月までの普天間飛行場の運用停止も目指す。普天間の運用停止と辺野古への移設をできるだけ時差なく実現することが、政治の責任だ。だが、翁長知事は辺野古への移設に反対する一方、普天間飛行場の運用停止については予定通りの実施を求めている。また、2019年2月までの普天間の運用停止は、あくまで日本政府と沖縄県の間の目標に過ぎない。アメリカ政府はこれに関与していないが、アメリカ政府との交渉なしに運用停止は実現できない。

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