好調マツダ 次の一手はいかに?


葉田邦夫 (はだ・くにお)  経済ジャーナリスト

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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マツダの先行きについて、自動車業界の関心が高まっている。マツダは1979年以来、米国の大手自動車メーカー、フォード・モーターと資本提携関係にあったが、今年9月末までにフォードが保有していたマツダ株の全株式を売却し、資本提携関係を完全に解消したのだ。このところの販売好調から堅調な業績が続くとはいえ、マツダは依然として経営再建中。今後の世界戦略やエコカー対策など山積する課題を考えると独り立ちは難しい。マツダは果たしてどこへ行くのか。検証してみた。

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 マツダは世界で唯一、ロータリーエンジン(RE)を実用化するなど技術的には優れたものを持っているが、経営的にはオイル・ショック、バブル崩壊、リーマン・ショックと外部要因に翻弄され、山谷を繰り返してきた。この中で、一時はフォードの完全傘下に入ったこともあるが、そのフォードもリーマン・ショックに直撃された経営危機を乗り切るため、マツダの経営から離れていったのだ。

 フォードに見捨てられたマツダが頼ったのは元々、関係の深かった住友グループ。国内生産比率が高く為替に左右されやすい体質からの脱却を目指して住友商事合弁でメキシコに北米向け拠点となるメキシコ工場を新設する一方、技術面では従来からのレシプロエンジン、ディーゼルエンジンに全面的に省エネ化を施したスカイアクティブ技術を実用化。これを採用した新型車を相次いで市場投入、業績を急速に立ち直しつつある。

 だが、マツダの企業規模からいって、この先独り立ちを続けていくには国内外ともに困難が立ちはだかる。この先、生き延びるにはどこかと提携もしくは傘下に入らざるを得ないのだ。

資本関係を含むトヨタとの全面提携はあるのか?

 そこで有力視されているのが2015年5月13日に「業務提携に向け基本合意した」と、発表したトヨタ自動車との提携だ。それというのもマツダとトヨタは元々、因縁浅からぬものがある。

 かつてはマツダが実用化したRE技術について提携交渉をした経緯があるうえ、最近では2010年にトヨタからマツダにハイブリッド(HV)技術を供与、マツダは『アクセラ』の一部車種にHV技術を搭載した車種を販売している。さらに立ち上げたばかりのメキシコ工場ではトヨタの北米向け小型車(サイオンブランドとみられる)を年5万台受託生産することが決定している。

 これによってメキシコ工場では『デミオ』の年産14万台規模に加えて、トヨタから受託した5万台が上乗せされ、生産規模は年20万台に膨れあがり、「(自動車工場にとっては採算ラインといわれる)年20万台規模に達することになる」(マツダ関係者)のだ。

 今回の基本合意もこうした地道な両社エンジニア間の交流を積み上げた「結果による」(自動車業界関係者)ものとみられるのだ。

 基本合意に基づいてマツダとトヨタの間では各分野別、階層別に様々な交流の場がスタートしており、トヨタにとってもメリットがあるとみられるテーマも、この先浮上しそうだ。その一つがディーゼルエンジンを巡る技術開発だ。特に欧州市場では小型車を中心にディーゼル車が主流だが、トヨタは出遅れた感が強い。このためトヨタは商用車を中心にディーゼル技術に優れたいすゞ自動車に出資し、共同でディーゼルの技術開発に取り組んだが、頓挫。今ではグループの豊田自動織機にディーゼルの開発を全面移管する方針を明らかにしている。

 こうした中、マツダのディーゼル技術は主力事業に相次いでディーゼル車を採用、主力の北米市場にも投入方針を打ち出すなど「そのディーゼル技術は国産車メーカーの中で際立っている」(証券系アナリスト)のだ。トヨタがマツダのディーゼル技術に「色気を示さないはずはない」(同)とみられている。

 こうした両社の「ウィン・ウィン」の関係が決まれば、資本関係を含めた両社の全面提携につながる可能性も高い。かつて富士重工業は米ゼネラル・モーターズ(GM)が手放した株式のうち、16・5%をトヨタに譲渡、米国工場(SLA)でのトヨタ車受託生産や小型スポーツカーの共同開発を実現。現在の富士重工の好調さの端緒とした例もあるだけに、両社の決断に注目が集まっている。

  
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