地域再生のキーワード

2015年12月22日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 地域課題に取り組むべく「2枚目の名刺」を持つことが奨励される佐賀県庁。ふるさと納税を使ったNPOへの寄付が成功したことによって、全国からNPOを佐賀に誘致して、一大集積地にするべく動き始めた。

 佐賀の有明海で海苔の養殖に携わる古賀康司さんと、佐賀県庁に勤める岩永幸三さんは、20年来の同志である。同じ「1型糖尿病」を発症した家族を抱え、共に病気と闘って来た。

岩永幸三さん(左)と古賀康司さん(右)

 1型糖尿病は、生活習慣病の2型と違い、体内のインスリン分泌機能が破壊されて突然発症する。毎日何度もインスリン注射をしなければならないため、患者本人はもとより、家族の苦労も計り知れない。社会の理解もなかなか進まず、先日も祈祷師の言を信じて注射を止めた子どもの患者が死亡する痛ましい事件が起きた。

 古賀さんたちは1996年に佐賀で患者の会を立ち上げた。岩永さんが会長、古賀さんが副会長を務めた時期もあった。2000年には全国の患者の会が集まるNPO(特定非営利活動法人)の設立にも参画。現在は「日本IDDMネットワーク」(以下、IDDMネット、井上龍夫理事長)として佐賀市内に本部を置く。

 治らないと信じられてきた1型糖尿病だが、iPS細胞やバイオ医療の急速な発達で、「治る病気」になる期待が高まっている。IDDネットでは05年にいち早く「研究基金」を設け、先端研究に携わる研究者や医師への助成事業に乗り出した。だが、そのための原資になる寄付は思ったほど集まらなかった。

 そんな時、NPOの資金調達などのアドバイスを行っているファンドレックス(本社・東京都港区)の鵜尾雅隆氏やイノウエ ヨシオ氏から思いがけない提案があった。佐賀県の「ふるさと納税」の仕組みを活用すべきだ、というものだった。

佐賀県県内の人口は約83万人で、47都道府県の中では42番目。一方で、板海苔収穫量、住宅用太陽光発電システム普及率、シリコンウエハの出荷金額などで全国1位となっている。

 佐賀県では、「ふるさと納税」として寄付をする人が使途を指定することができる。その指定先は県の事業だけではなく、県内のNPOでもいいのだ。同様の制度を持つところは他にもあるが、ほとんど活用されていない。全国のふるさと納税の制度を調べていた鵜尾氏らが、この制度を使えば寄付者のわずかな実質負担で大きな資金をNPOが得ることができる点に目を付けたのだ。

 「恥ずかしながら、そんな制度があるとは、その時までまったく知りませんでした」と、県庁職員でNPO支援の部署が長かった岩永さんは苦笑する。さっそく庁内で取り上げ、14年度に実現した。

 結果は大成功だった。ほとんど寄付がなかったIDDMネットに、一気に1300万円のふるさと納税が集まったのだ。県からは95%がIDDMネットに助成金として支給される。今年度は5000万円を突破した。

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