WEDGE REPORT

2015年12月25日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 今年9月、米カリフォルニア州の厳しい排気ガス規制をクリアするために、独フォルクスワーゲン(VW)社がソフトウェアを使った不正を働いていたことが明らかになり、一大スキャンダルに発展した。米では「VWゲート」と呼ばれる不正により、世界で1000万台以上がリコール対象となり、VWではCEO辞任にも発展した。

 VWゲートは責任の所在などをめぐり現在も審議が続行中だが、米政府はVWに対し巨額の罰金、刑事告訴も辞さない構えだ。VWの販売は米国内では11月に前年比25%減になるなど、苦しい状況が続いている。

15年9月に発表したSUV型EVのテスラ・モデルX

VW擁護の中心にイーロン・マスク

 そんなVWに対し、擁護の運動が米カリフォルニア州で起きている。中心となっているのはテスラCEO、イーロン・マスク氏だ。

 マスク氏は州内のIT企業、環境関連企業、投資家ら41人と共に同州の大気汚染管理局(CARB=California Air Resouce Board)に対し公開書簡を提出、VWへの罰金やリコール修理の軽減を求めた。

 その内容だが、まず、前提としてカリフォルニア州はVWに対し州内で販売された不正の疑われるすべてのディーゼル車両を回収、州の排ガス規制に合致するよう修理することを求めている。これをマスク氏らは「ナンセンス」と呼ぶ。なぜなら州内の対象車両はそれほど大きな数字ではなく環境全体に大きなマイナス要因をもたらすものではない。さらにユーザーが修理により車のパフォーマンスが損なわれるのを恐れて対象車両であっても修理に出さない可能性が高い。

 そもそもVWのような開発研究に多額の投資をしている企業が、米国の排ガス基準に合致するために不正を働かなければならなかった、という事実を考えると、ディーゼル車両に大きな欠陥があった、と結論づけるしかない。それならばVWが支払うべき多額の罰金、修理費用を脱ディーゼル、より環境に優しいゼロ・エミッション(無公害車両)開発に充当すべき、というのが骨子だ。

 書簡では5カ条の提案を突きつけている。

 1、VWをカリフォルニア州内の不正対象車両のリコール修理の義務から解放すべき。なぜなら対象車両はそれほど多くはなく、ユーザーに対し現時点で排ガスに関連したリスクを与えるものではない。

 2、VWに対し、ゼロ・エミッション車両の販売を奨励する勧告を出すべき。ゼロ・エミッションである以上排ガス不正は起こり得ない。

 3、VWによるゼロ・エミッション車両の販売を、不正を働いたディーゼル車両による排気ガスを10:1以上の割合でオフセットするレベルに持っていく。これを5年内に達成する。

 4、VWに対し、罰金に相当する金額で州内に研究開発施設を建設させる。

 5、VWに州独自のゼロ・エミッション車両に対する環境クレジットを与え、同社が上記のプランを達成するタイミングや方法に自由度を与える。

 つまり、リコールや罰金を軽減する代わりにカリフォルニア州内にゼロ・エミッション、すなわちEVもしくはFCV(燃料電池車)の工場を作り、不正により余分に排出された排気ガスをオフセットさせろ、という主張だ。

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