ヒットメーカーの舞台裏

2015年12月24日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 スマホに映しだされる360度のパノラマ動画や静止画を、没入感のあるVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)として体験できる簡便な装置だ。材料は段ボールと樹脂製のレンズであり、税込み1000円から3000円という廉価も注目されている。2014年7月に発売後、今年10月には累計販売10万個に達した。

段ボール製のビューワーに専用のアプリをダウンロードしたスマホを繋ぐだけで仮想現実を体験できる。

 無料の専用アプリをスマホにインストールし、ハコスコ(東京都渋谷区)が運営するネット上の「ハコスコストア」や、ゲーム会社などが提供する映像を楽しむ。ハコスコストアには芸能プロダクションや自動車メーカー等の法人が有料で買い上げた専用チャンネルにある映像のほか、一般ユーザーが無料でアップロードした1000件余りの作品も用意されている。

 開発者は、ハコスコの代表取締役でもある神経科学者の藤井直敬(49歳)。本職は理化学研究所の脳科学総合研究センター・適応知性研究チームのリーダーである。一見、VRとは遠い存在の研究者がハコスコを生み出すに至ったのは、藤井が取り組む研究テーマにあった。

 それは「社会脳(社会的脳機能)」という、一般には馴染みのない分野。平易に解説してもらうと「他者が居ることで、一人の時とは自分の振る舞いが変わる」という、人間の行動の仕組みを解明する研究だそうだ。また、われわれは友人、親、あるいは職場の上司といった具合に、接する人によって自分の態度が変わってしまう。

 ところが、同じ人に会っても場所など外部の条件によっても行動が左右される。このため、被験者を同じ環境下に置いて実験を重ねることが非常に難しい研究なのだ。そこで藤井が「繰り返し再現できる『現実』をつくりたい」と、着目したのがVRの世界だった。

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