WEDGE REPORT

2015年12月28日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 総務省の裁量で割り当てられた電波を、大手携帯キャリアが既得権として独占している日本の携帯通信市場には自由競争が存在せず、市場原理が働いていない。

iStock

 今年9月の経済財政諮問会議における携帯電話料金に関する安倍首相の発言を受けて、利用者の負担を減らす方策を話し合うため、総務省主催で大学教授ら有識者による「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が10月19日に発足した。大手携帯キャリアによる協調的寡占状態を解消するきっかけになるのか、その4回の会合(1回は非公開)を追ってみた。

表面的対処に留まったタスクフォース

 「急激な変化によってマーケットを撹乱させることなく、数年かけて徐々に事業者自らが段階的に適正化する取り組みを行うものと考えている」

 12月16日の最終回(5回目)の会合でタスクフォースの取りまとめの案が採択されたが、その最後の締めは、なんとも腰の引けた言葉だった。「急激な変化によってマーケットを撹乱させる」とは、どんなことを懸念した言葉だったのだろうか。

 第1回の会合では、有識者(構成員)から次のような発言があった。

 「アメリカは、いわゆる2強2弱と言われる、Verizon、AT&Tと、T-Mobile、Sprintがいて、T-Mobileが縛りのないことを売りにするシンプルなプランを打ち出して、果敢に市場をかき回したわけですよ。それが時流にぴったり合ったのでしょうね。アメリカの国民も、やはりそれまでのプランというものは複雑でわかりにくいと思っていたのでしょうね。いろいろな縛りもありました。 チャレンジャーがいると市場は動くのです。T-Mobileが果敢に新しい、シンプルを売り物にするプランを出したことが、大手も巻き込んでアメリカ全体のプランをシンプルにさせていっている、シンプル競争が進んだ、そういうふうに私は理解しています 」

 「せっかくこれまで頑張って自由化してきた料金を、この際直接規制で、というのはいかにもよろしくないといいますか、結局、すごく競争制限的な方向にしか物事は進まないように思いますので、今日伺った限りですと、やはり特にMVNOを中心とした競争促進ですね、MVNOの参入の障壁を取り除いてMVNOの参加を促進するような方向なのかなという、この1回目の時点ではそんなふうに感じました」

 タスクフォースの基本的な認識は、大手携帯キャリア3社が寡占状態の中で、似たような料金設定や販売方法をしていることが問題だということだった。その根源は、総務省電波局による裁量行政によって割り当てられている電波を、大手携帯キャリアが既得権として独占していることだということは明白だ。これらの発言は、その問題を解決しようとするものと思われた。しかしその後の議論や、携帯キャリアやMVNOからの非公開のヒアリングなどを経てまとめられたものは、表面的な問題の対処だけにとどまっていた。

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