イラク軍、戦略都市ラマディ奪還
IS敗退、深刻な打撃


佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE REPORT

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イラク政府軍とスンニ派部族勢力は29日までに、イラク西部・アンバル州の州都ラマディの大部分を過激派組織「イスラム国」(IS)の手から7カ月ぶりに解放した。ISにとってラマディは北部のモスルと並んでイラク占領の象徴的な存在で、同市の陥落でその劣勢は一段と明らかになった。今後の戦況に大きな影響が出るのは必至だ。

ラマディ奪還を喜ぶバクダッド市民(Getty Images)

全員がほぼ玉砕

 ラマディは首都バグダッド西方約100キロに位置し、イラク西部最大の都市で、人口は約50万人。シリア国境に至る戦略的な交通の要衝である。ISは5月、電撃的に同市を占領し、政府軍部隊はほとんど戦わずして逃走した。これまで何度か奪還を試みたが、すべて失敗、12月22日から米軍の爆撃支援を受けて政府軍、スンニ派部族部隊約1万人が攻略を開始していた。

 IS側は同市への侵攻当初は戦闘員1000人の規模だったが、その後戦闘員が徐々にシリアに撤収し、約300人が地雷や仕掛け爆弾、無数のトンネルなどで防衛線を固め、政府軍の進撃が始まると、自爆作戦を相次いで敢行した。
しかし米軍が集中的な空爆を加えてIS側の陣地を破壊し、政府軍を助けた。ラマディでの米軍の空爆は7月以降、630回を超えた。

 イラク政府軍将軍らによると、戦闘員はほぼ玉砕し、市中心部をはじめラマディ地域の80%が解放された、という。しかし市北西部などで戦闘員の残留部隊が依然抵抗を続けており、スナイパーによる銃撃音が響き渡っている。政府軍部隊は300個といわれる仕掛け爆弾を除去しながら掃討作戦を進めており、完全解放は時間の問題と見られている。

 イラクでは3月以降、サダム・フセイン元大統領の故郷ティクリート、最大の精油所がある町バイジ、北部のシンジャルがISの占領から解放され、今回のラマディの奪還により占領されたまま残る主要な都市は、北部のイラク第2の都市モスルや西部ファルージャだけとなる。

 ISは「イラクにおける当初の占領地の40%を失った」(オバマ大統領)とされており、今後イラクとシリア両国でIS劣勢の戦況にさらに拍車がかかる可能性がある。この要因の1つは、米主導の有志連合、とりわけ米、仏、英が
パリの同時多発テロ以降、一気に爆撃を強化したことだ。

 この3国が「それまでのお茶を濁すような攻撃から本腰を入れた攻撃に転換した」(ベイルート筋)ことで、ISが集団で作戦を展開することができなくなった。その結果、IS戦闘員は塹壕に身を潜めるか、民間人を盾にする形で都市部に分散しているのが実態だ。ロシアによる空爆もISの攻勢を阻んでいることもある。

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