中国台頭で変わる米海軍
本格化する国防省対中戦略


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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戦略の専門家で、ジョンズホプキンス大学大学院や米海軍大学で教鞭を執るトマス・マンケン教授がインタビューに応じ、米海軍の直面する課題とその将来について語っています。以下は、そのインタビューの要旨です。

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冷戦後のシーパワー変化の特徴について

 水上艦や潜水艦、航空機への投資は大規模になるので、数十年にわたる使用を念頭に計画される。だから、現在の米海軍を含む世界の海軍に冷戦期の名残があるのは驚くべきことではない。ただしこの前提は、急速に近代化する中国海軍には当てはまらない。彼らの大部分は冷戦後に整備されたものだからだ。

 冷戦後の大きな変化の1つは、いわゆるA2/ADである。精密誘導兵器やセンサー、指揮統制能力の拡大により、航空機や水上艦は徐々に脆弱になってきている。ゆえに、潜水艦がシーパワーの中でも重要な存在となってきており、今後もそれは続くと思われる。

冷戦後の海軍における技術上の発展・革新について

 最重要分野の1つは無人システムの発展である。それは無人航空機(UAV)にとどまらず、無人水上艇(USV)や無人潜水艇(UUV)についても言える。今後は無人システムが偵察から攻撃まで、様々な分野で活躍することになろう。

 それ以外の分野で実用化が見込まれるのは、洋上で使用する防空・ミサイル防衛用のレーザー兵器やレールガンだ。レーザー兵器はその実用性が実証されれば、(攻撃優位とされている)ミサイルとミサイル防衛のバランスを変化させるかもしれない。レールガンの実用化は、海軍の地上攻撃能力向上に繋がる。

海軍に変化をもたらした要因について

 海軍は、冷戦後、イラク・アフガン戦争時、そして現在と、常に予算削減に直面してきた。その一手段として、能力は控えめでも、数を多く揃えるというコンセプトでLCS(沿海域戦闘艦)のような計画が進められた。

 しかし近年、中国の能力向上や、ロシアの挑発のような外国の軍事発展が海軍の技術を促進するようになっている。中国は海空軍事力の増強に力を入れ、ロシアはミサイル分野、特に洋上発射型巡行ミサイルで世界をリードしている。それは最近のシリア攻撃で見た通りだ。

海軍に600隻規模の艦船が必要という意見について

 海戦において、量と質の両面が重要である。艦船の保有数は、プレゼンスや抑止、同盟国への安心供与の観点から、海軍の重要な役割を担保している。

 だが質も重要となる。プレゼンスや抑止、安心供与は、信頼できる戦闘力に基づいている。LCSのような船舶は比較的安く調達できるが、戦闘力の信頼性が低下しているため、最終的に抑止効果や同盟国への安心供与を弱めている。

民間企業との協力について

 予算制約が続けば、海軍が新技術を開発するのに民間企業に頼る機会は増えてくるだろう。総じて、国防省はアイディアのみならず、開発費についても民間に依存するようになるだろう。

海軍の役割の変化について

 海軍はソ連崩壊以降有力な競争者がいなかったが、戦争の性格が変わるとともに、中国が急速に有力な競争者になっている。この双方が、今後の米海軍のあり方に大きく影響する。

出 典:Thomas Mahnken ‘Naval Warfare‘(Cipher Brief, December 20, 2015)
URL:http://thecipherbrief.com/article/naval-warfare

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