世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月9日

 新アメリカ安全保障センター(CNAS)のヴァン・ジャクソン客員研究員が、Diplomat誌ウェブサイトに1月6日付で掲載された論説において、アジアで対中バランスをどう維持するかにつき、海域の常時哨戒を行い、中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせることといった、現実的な提案を行っています。

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対中戦略に求められる3つのこととは

 アジアにおける米国の政策の目的は、安定した自由な秩序を維持することだが、最近はアジア諸国間の信頼の欠如、軍事力強化、領土問題とナショナリズムによって、この目的の達成が阻害されている。しかも、中国は微細な主張を強引に通そうとし続け、予想外の紛争を起こしかねない。

 現在の米国の政策は、これらの問題を止めようとしていない。しかしこのまま進めば、米国のアジアにおける利益は阻害される。何ができるだろう? 戦争にもならず、一方的に譲歩することにもならない解決策が今ならいくつかある。

 一つは、米国の同盟相手及びパートナーのうち、中国と紛争に陥る可能性が高い国、例えば日本、台湾、ベトナム、フィリピンの軍事力を高めることである。これは、これら諸国に中国と同等の軍事力を備えさせるということではなく、抑止力を高め、中国の行動を慎重にさせるためである。

 もう一つは、情報をできるだけガラス張りにすることである。中国は南シナ海領土紛争で、軍ではない力を行使し、「これは力の行使ではない」と強弁するが、情報をガラス張りにすれば、このようなことを難しくすることができる。そうなれば、いずれの側が仕掛けたかもわかるし、中小国が団結して中国を非難しやすくなる。

 そのためには、米国はアジアの関連国の海上偵察能力を向上させるのが良い。それは既にフィリピン、インドネシアで行っていることであり、シンガポールにP-8哨戒機を供与することも正しい一歩である。しかしこれはまだ「大海の一滴」であり、2017年に予定されるMQ-4C Triton無人偵察機配備等で米国が収拾する情報は、同盟国、友好国ともっとシェアするべきである。

 もう一つは、いくつかの同盟国・友好国の軍事力を高め、中国がこれら諸国との初期段階の小さな戦闘では勝てないようにしておくことである。これは、中国が米国に対して取っている「接近阻止」戦略を逆に行くものである。そのためには、これまでのMD(ミサイル防衛)、巡視船の供与だけでは不十分である。水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与が不可欠だが、これは例えばベトナムに対する従来の政治的・法的制限そして融資上の制限措置を解除することを意味する。もっとも重要なことは、先端ミサイル、無人機の供与を制限しているミサイル技術管理レジーム(MTCR)を改正することである。

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