以上では生ぬるいと言う者がいるだろう。逆に以上の措置は、戦争の危険をかえって高めるという者もいるだろう。米国の技術流出を心配する者もいるだろう。
しかし、以上の措置は、戦争と一方的譲歩の中間を行くものである。今日の技術開発は軍事研究より民需部門で行われており、技術の流出を過度に心配しても仕方ない。如上の3つの方策は並立し得るものでもあり、将来の大統領の対アジア政策を最も柔軟なものにできるだろう。
出典:Van Jackson,‘Rethinking US Asia Policy: 3 Options Between Appeasement and War’(Diplomat, January 6, 2016)
http://thediplomat.com/2016/01/rethinking-us-asia-policy-3-options-between-appeasement-and-war/
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米軍自身の言及なき提案
この論説の筆者ヴァン・ジャクソンは、空軍の朝鮮語専門の情報担当としてキャリアを開始、その後一貫してアジア太平洋関連の国防畑を歩み、2009年から2014年まで国防長官の顧問として朝鮮半島等を担当してきた人物です。この論説は、アジアで対中バランスをどう維持するかについて現実的な提案を行っており、オバマ後の政権を主たるターゲットとした提言でしょう。
提案の肝は、海域の常時哨戒を行い、中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、同盟相手・友好国に中国との小規模戦闘では勝てる力をつける、つまり中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせること(中国が米国に対して適用している「接近阻止:の戦略を逆用)、そのために水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与まで検討することです。
しかし、気になる点もあります。まず、米軍(特に海軍、海兵隊)自身についての言及がほとんどありません。豪州の役割についても言及がありません。この論説の趣旨には賛成できますが、アジアの安定を地域諸国の間のヤジロベエ的相互抑止に委ねてしまおうという発想であるとすれば、要注意です。
そして、日米同盟の役割について言及がありません。日本で論議を呼ぶのを警戒したのか、それとも、国防省でも日本担当者以外のマインドはこの程度のものなのかは分かりません。
東アジアのバランスについては、中国、北朝鮮の核兵力、ロシアの新型巡航ミサイルが呈する脅威等も議論する必要があります。3月末には米国で核安保サミットが開かれるので、立場を整理しておく必要があります。
日本の対中抑止力を整備するためには、日本の空母保有を米国が明示的に認めること、F35の供与を急ぐこと、巡航ミサイル、無人機技術を供与することが有効でしょう。
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