世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月15日

 アラブの春から5年経ち、アラブ世界の状況はかつてないほど悪いが、自らの窮状についての人々の理解は進み、そこに希望があるかもしれない、と英エコノミスト誌が言っています。論旨は以下の通りです。

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かつてないほどアラブ情勢は悪化したが…

 アラブの春はチュニジアを除いて当事国にハッピーエンドをもたらさず、リビアとイエメンは内部崩壊、エジプトとバーレーンは以前より強硬な独裁制となり、シリアは奈落の底にある。また、他のアラブ諸国も状況は悪い。イラクは事実上、クルド、シーア派、IS支配地域に分裂し、アルジェリアとスーダンは略奪的な軍事政権に支配され、パレスチナは孤立と弱体化を深めている。富裕な湾岸諸国でさえ、石油価格の急落や増える若年層の高い失業率等、体制を揺さぶりかねない深刻な事態に直面している。

 このようにアラブの状況はかつてないほど悪い。しかし、アラブの春は、アラブの社会や国家の仕組みを変えることはできなかったが、そうした仕組みについての人々の理解を大きく変えた。人々はアラブ国家が腐っていることを知ったのだ。

 この腐敗は、何世代ものアラブのエリート層が責任ある有効な統治モデルを創らず、教育も推進せず、60年も独裁制を続けたことでもたらされた。そのため、反動が起きても、それは焦点と方向性を欠くことになってしまった。アラブの春は、有能な指導者、信頼に足る行動計画、有効な思想を生み出せなかった。ただ、政治的イスラムは現実に何を意味するのか、世界におけるアラブの位置やアラブ諸国同士の関係はいかなるものか、アラブ国家・社会の強みと弱みは何なのかをはっきり見えるようにはしてくれた。

 これまでアラブの世論は地域の諸問題を西側の介入のせいにしがちだった。確かに西側にも責任はある。中でも最大の失敗はイラク統治だ。しかし、こうした失敗や、アラブの春への西側のお粗末な対応のおかげで、西側の限界が露呈され、中東に外からの介入が続くのは、西側の悪意ある意図よりも、アラブ自身の弱さに原因があることがわかってきた。アラブ諸国同士の関係の脆さやアラブ国家自体の弱さも露にされた。

 従って、今後新たな反乱が起きた場合、反乱勢力側は、名ばかりの指導者の打倒や実権のない議会の設立以上のものを要求するようになろう。

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