世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月16日

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 ローレンス・サマーズ元米財務長官が、恐怖にとらわれた市場が発するシグナルを深刻に受け止める必要があり、最悪の事態はこれからだ、と警告する一文を1月10日付フィナンシャルタイムズ紙に寄稿しています。要旨は次の通り。

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株式市場が発する警告

 市場は往々にして年末に動揺し、年が明けると落ち着くが、今年はそうではない。欧米市場は大荒れで、中国の株式市場と人民元は劇的に下落した。石油価格はイランとサウジの間の緊張状態にかかわらず下落した。問題は二つある。一つは将来の成行きの指標として投機的な市場をどの程度頼って然るべきなのか、二つ目は世界的な景気後退をどの程度警戒すべきなのかということである。

 市場はそれが評価しようとするファンダメンタルズ以上に動揺する。50年前、ポール・サミュエルソンは「株式市場は過去5回の不況のうち9回を言い当てた」と皮肉を言った。ロバート・ルービン(財務長官)はクリントン政権時代、ホワイトハウスに「市場は上がったり下がったりするものだ」と言い続けた。

 しかし、市場は将来を継続的に評価し膨大な数の市場の参加者の見解を集約するので、しばしば価値ある警告を発する。市場の動向を単にスペキュレーションと片付けると、しばしば重大な間違いを犯す。市場はFRBよりも前に2008年の危機の重大性を理解していた。市場は数知れない場面で予測専門家よりも遙か前に景気後退、不況を見抜いていた。市場は時には間違った警報を発するので盲目的に従うべきではないが、一般通念では迫り来る嵐を捉えられない。

 多くの市場から長く続くシグナルが発せられる時、シグナルは深刻に受け止められるべきである。米欧日では10年以内にインフレ目標に達することはないであろうという市場のシグナルもそれである。特に不気味なのは市場がグッド・ニュースに積極的に反応しなくなることである。

 中国の状況は市場心理と不器用な政策対応の反映であり、世界市場の反応は一時的な伝染であるとも考え得るが、自分(サマーズ)はそうではないと思う。中国の成長の20%は金融サービスのセクターによるもので、それは英国のGDPにおける比率とほぼ同じである。また中国の債務の水準は異常に高い。これは健全で持続可能な成長のケースとはとても言えない。

 近年、中国の成長はインフラ投資に大きく依存してきた。中国は米国が20世紀に使ったセメントとコンクリートよりも多くを2011~2013年の間に流し込んだ。これも持続可能ではない。そして中国のコモディティーに対する需要が減退する。経験によれば、一国の経済の最良の指標は、国民がその資産を自国にとどめ置くか、それとも海外に輸出するかにある。中国人はお金を海外に移すことに熱心である。もし外貨準備による大きな買い支えがなければ、人民元は更に下落していただろう。

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