絵に秘められた物語の世界へ

藤田美術館
2016年3月5日~6月12日


狩野直美(かのう・なおみ)
東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

今月の旅指南

全国各地で行われるお祭りや美術展、舞台、音楽会など、おもに和の心が楽しめる今月の催しを厳選してご案内いたします。(画像:iStock)

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毎春、桜の通り抜けで賑わう大阪・造幣局と大川をはさんだ対岸にある藤田美術館。明治の実業家、藤田傳三郎(でんざぶろう)とその息子たちが収集した国内有数の東洋および日本美術のコレクションで名高い。年に2回開かれる企画展のうち、春季展が3月5日から開催される。

尾形光琳 《桜狩蒔絵硯箱》 江戸時代(18世紀)
藤田美術館蔵

 今回の春季展のタイトルは「絵ものがたり」。絵巻や掛軸、皿、香合(こうごう)、茶箱、花入(はないれ)など、さまざまな美術作品に描かれた物語の世界にスポットを当てる。

 なかでも注目したいのが、尾形光琳(こうりん)作「桜狩蒔絵硯箱(さくらがりまきえすずりばこ)」だ。散り始めた八重桜の下を行く馬上の貴公子を蒔絵や螺鈿(らでん)で描いた美しい作品で、蓋を開いた硯箱の内面や底の裏側にも桜狩の情景が続く。散りばめられた文字から、藤原俊成の和歌「またや見ん 交野(かたの)の御野(みの)の桜狩 花の雪散る春のあけぼの」に着想を得たといわれる。一方で、歌に詠まれた交野は『伊勢物語』に桜の名所と記されており、馬上の貴公子は在原業平(ありわらのなりひら)を表していると考えられる。作品にはいくつもの物語が秘められている。

 また、国宝「玄奘三蔵絵(げんじょうさんぞうえ)」(十二巻のうち第九巻と第十一巻)や、国宝「大般若経」、重要文化財「銹絵絵替角皿(さびええがわりかくざら)」(尾形乾山(けんざん)作、尾形光琳画)なども展示される。藤田美術館所蔵の名宝との出会いを楽しみたい。

<開催日>春季展 絵ものがたり(2016年3月5日~6月12日)
*会期中、展示替えあり
<会場>大阪市都島区・藤田美術館(東西線大阪城北詰駅下車)
<問>☎06(6351)0582
 http://fujita-museum.or.jp/

*情報は2016年1月現在のものです。料金・時間・休館日などの詳細は、お出かけの際、現地にお確かめください

  
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◆「ひととき」2016年3月号より

 

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