「底板が少しずれちゃったからやり直しだ!」
「釘がはみだしたから打ち直す!」
風の谷幼稚園の風組(5歳児クラス)からは、毎年こんな声が聞こえてくる。これは風の谷名物ともいえる「箱作り」のひとコマ。長さが120センチメートル・厚さ1.4センチメートル・幅4センチメートルもある板を与えられた子どもたちは、「どうすればこの板から箱が作れる」を考え、寸法を測り、のこぎりを使って板を切り出していく。そして、板を組み合わせてかなづちで釘を打っていく。
もちろん、1回でうまくいくことは滅多にない。底板がずれたり、枠が歪んだりと悪戦苦闘の連続だ。しかし、子どもたちは釘抜きで釘を抜き、何度も何度も挑戦する。ついには立派な箱が完成し、仲間や先生と喜びを分かち合う。こんな光景が毎年繰り返されている。
風の谷幼稚園では、5歳児に限らず、3歳児・4歳児の教育カリキュラムにも木工作を取り入れている。これによって子どもたちは自分の手で遊び道具(船や乗り物)を作り出せることを知り、さらに道具を使いこなす技能を獲得していくが、それは結果であり本質ではない。このカリキュラムの一番の狙いは、誇りを持って生きていくために必要な3番目の力である「問題は必ず解決できるという思考力」を身につけさせることにある。
今回はこの内容について見ていこう。
安易な慰めは 目標達成意欲を下げる
まだ非力な子どもたちが一生懸命のこぎりを引いて板を切り、小さな手にかなづちをもって釘を打つ姿を見ていると、その健気さに胸がいっぱいになってしまう。そして、出来上がった箱が少々歪んでいようとも「よくできたね!」と褒めたくなる。また、思い通りに行かなくて落ち込んでいる子どもがいれば、「失敗したっていいんだよ」と慰めたくなる。これは大人としてごく普通の感情だろう。しかし、子どもの成長を真剣に考えるならば、このような対応にはいろいろなマイナス面が見えてくる。