Bangkok駐在便り

2016年2月18日

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 3人目は、日系のインターネット系サービス企業で働くションプーさん。26歳、独身。日本語は堪能で、家が中華系ということもあり、ルックスは日本人と変わらず、「日本人とよく間違えられます」という。同社に入社して3年。スタッフは日本人10人、タイ人が約40人と、日系企業としては大所帯の構成(ちなみにタイの日系企業では、日本の超大手企業でも、日本人スタッフが1〜2人というところも普通だったりする)。エンジニアをサポートするのがションプーさんの主な仕事だが、プロイさんと同様に、日本人とタイ人との橋渡し役を担うことも多々ある。

日本人は命令するだけで説明しない
商習慣の違いを理解することが重要

 彼女の日系企業に対する不満は、やはりコミュニケーションの問題。「個人の目標数字を達成すれば、それでいいの?」「本音を言わなさすぎ」「一方的に命令はしておいて、説明はしない。それでいて、進行の遅れを納品直前で気づくことが多い。責任感がないのでは?」と不満が続いた。営業マンであれば、自分の数字を達成すれば目的は完遂なのかもしれないが、全体を俯瞰している彼女にしてみれば、「おかしくない?」という感覚らしい。営業が強い会社とのことで、「ほかの部署は営業のアシスト役なの?」といった、タイに限らず、どこの企業でもあり得そうな不服を漏らした。

 また、「本音を言わない」とは、日本人独特の“空気を読む”コミュニケーションに対するもの。表では「淡々と仕事をしながらも、裏では平然と文句を言っている」ことが我慢ならないらしい。特に彼女は日本語が堪能だからこそ、日本人、タイ人双方の文句の聞き役にもなり、ストレスが溜まっているよう。「責任感がないのでは?」ということについては、これも日本流の仕事のやり方に起因する。ここタイでは、メール一本で「●●をやっておいて」では、仕事が思い通りに進むことはほとんどない。

 メールを送った上で、さらに口頭で説明することが大切。ここら辺は日本人にはもどかしいが、やはり言語も違う国では、当人を理解させ、納得してもらわなければ円滑には仕事が進まない。逆に言えば、日頃からコミュニケーションをとっていれば、業務は滞りなく進行する。最初に登場したプロイさんの企業が好例だろう。とはいえ、ションプーさんも「辞めたい」ほどの不満を抱えているわけではなく、しばらくは同社に勤めるという。後輩もでき、仕事に対する責任感も増え、業務自体は前向きに行っている。給料も3万バーツ弱と、同世代に比べて、高いことも仕事を続ける一つの理由にはなっている。

 プロイさん、ションプーさんに共通していたのが、日系企業に勤めるタイ人は「辞めたい、辞めたい」と言いながら、なんだかんだで働き続けるパターンが多いという。そこはやはり高給ということが大きな理由になっているのだろう。「本当に辞めたい」というレベルまで不満を抱いているのは、彼女たちの感覚によれば、全体の2割ほどらしい。また、職場でのセクハラ問題については「ほとんど聞いたことがない」と口を揃えて話していた。

 タイの労務管理は、やはり日本とは大きく異なる。言語も通じず、「阿吽の呼吸」もなければ、日本人が苦労するのは当然のこと。だからこそ、コミュニケーションの問題をクリアすることが最も重要。「最初の約束とは違う」といったことも、タイ人にとっては深刻な問題であり、日本ではしばしば聞く“思いもよらない”人事異動などは「ありえない」のだ。常日頃からスタッフに話しかけ、ときにはプライベートまで心配するほどの気遣いをもって臨むことが、タイでは大切であり、それが円滑な業務推進につながってくるのも事実である。

  
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