イーロン・マスクの『恐怖症』は異常?
AI暴走防止会社を設立


土方細秩子 (ひじかた・さちこ)  ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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映画「ターミネーター」はスカイネットという人工知能(AI)に支配された近未来からやってきた人類が、未来を変えようと戦うストーリー。ちなみにこの近未来は2029年に設定されている。

ターミネーターの登場は2029年(iStock)

AI化時代をはっきりと「恐れている」と公言する

 現実社会でも今、AIは開発競争が最も進む分野だ。グーグルがはじめた車の自動運転システムは、中心がAI。この技術はグーグルだけではなくアップル、フェイスブック、マイクロソフトなどのIT大手、さらに自動運転を推進する自動車メーカーも開発に参加する。トヨタがマサチューセッツ州に研究施設を設け、MITやハーバードの研究者と自動運転システムの共同開発に従事する、と発表したのも記憶に新しい。

 しかし、人間よりもはるかに演算処理能力が高いコンピュータに、「ディープ・シンキング」という考える力を与えるAIは、ターミネーターの世界のようにいつか人類を凌駕し、機械に支配された世界を実現する危険性を秘めている。

 このAI化時代をはっきりと「恐れている」と公言するのが、テスラCEOイーロン・マスク氏だ。テスラ自身がグーグルのような自動運転システムをモデルSに搭載しており、AIから多くの利益を得ているのだが、「人間が技術を使いこなすうちは良いが、いつか機械に支配される時代が来るのでは」と、行きすぎたAIの発達に懸念を表明する。

 その懸念の表れとして、同氏は昨年12月、「Open AI」という非営利企業を設立した。パートナーとなったのは数々のITの起業家を支えてきた投資家、Yコンビネーターのサム・アルトマン氏。両氏は数十億ドルずつを負担して「AIの能力を最大限に引き出し、それを誰とでも共有する」企業を生み出した。

 なぜオープンソースでAI技術を共有することがAIによる世界支配を防ぐことになるのか? 答えはズバリ「1社がAI技術を独占し、その方向性が外側から決定できない事態を防ぐ」ことにある。例えばAI技術で現在最先端なのは間違いなくグーグルだが、グーグルにすべての技術が集中することをオープンソースによって阻止する、いわば「AI界のウォッチドッグ」のような役目をOpen AIは果たすことになる。

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土方細秩子(ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

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