風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年11月26日

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野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

「このお芋を幼稚園まで自分で背負って帰るんだよ!」
と背負わせてみると、芋が持ち上がらず、立てません。しばらく考え、小さな芋をいくつか選び減らしていました。すると、謙佑くんの口からよだれがつーっと芋を減らす度に流れるのでした。それでもかなりの重さはありますが、背負った謙佑くん。
途中、あまりの重さに謙佑くんが泣き始めました。けれども、前を歩いていた琴乃ちゃんが優しく「謙ちゃん、泣くと力が出ないよ」と声をかけると、ぐっとこらえて歩き始めていました。
「えっさ、ほいさ」と言いながら歩いていた耕太郎くんの目にもうっすら涙が。けれども、耐えながらぐっとこらえて歩きます。坂道では、ひっくり返りそうな耕太郎くんのリユックを後ろから支えて歩く隆太くん。「力をあげるよ」と手をつなぐ明日香ちゃん。「ひっぱってあげる」と手を引く神楽くん。
“みんなで幼稚園まで帰るんだ”
そんな思いが感じられる瞬間でした。                  花2組 学級通信「にこにこ」より

 

 

 



 これは11月中旬に行われた風の谷幼稚園名物のひとつである「さつまいも掘り」の年少児クラスの様子だ。「いも掘り」というカリキュラムを取り入れている幼稚園は多いが、風の谷幼稚園の流儀は一味違っている。春の「じゃがいも堀り」、そして秋の「さつまいも掘り」と年に2回、そして年少、年中、年長の3年間で合計6回行われる「いも掘り」に込められた教育意図とは何か? 今回はこれについて紹介していこう。

自分の行動に責任を持たせる

 この「いも掘り」にはシンプルな決まりがある。それは、「自分で掘った芋は自分で背負って幼稚園まで持ち帰る」というものだ。重くて途中で降ろしてしまうと、降ろした分は先生に没収されることになっている。

幼稚園に戻ったらリュックを計測。3.7キログラムとは、広辞苑とマンガ週刊誌1冊分ずつに相当する。3歳の子にとっては、かなりの重さだ

 では、園児たちはどのくらいの重さを背負うのだろうか?今年度の「さつまいも掘り」で1人当たりの“背負って帰ってきた芋の量”は以下の通りである。

花組(年少児クラス):約3.7キログラム(個人の最高記録は7.0キログラム!)
鳥組(年中児クラス):約5.0キログラム(同8.5キログラム!)
風組(年長児クラス):約6.6キログラム(同11.5キログラム!)
※各年次2クラスの1人当たり平均値

 ある統計によれば3歳児の平均体重は14キログラム弱。つまり、花組の子どもたちは自分の体重の3分の1弱の重さを背負ってきたことになる。さらに、畑から幼稚園までの道のりは約1.5キロメートルで、山手線「原宿→代々木」駅間に相当する。しかも、この道は平坦ではなく、木の根っこが地面に露出しているような尾根道だ。大人で考えれば、米一俵を背負って、10キロメートルの山歩きをするような感覚だろう。

 もちろん、あまりの重さに途中で泣き出してしまう子どももいる。その時には先生が声をかける。

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