2024年4月18日(木)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年11月26日

いも掘りに比べたら受験もなんのその

 このいも掘りを3年間で6回経験することで、子どもたちはどのように成長していくのだろうか?

 以前、年長児クラスでうれしいニュースがあった。それは、年少児クラスのときには「掘るのがイヤだから」「重いのがイヤだからいいの」といって1個しか芋を掘らなかった子どもが、背負いきれないほどの芋を悪戦苦闘しながらも持ち帰ってきたのだ。

 「年少のときは、担任も周りにいた先生たちも実は迷いました。みんながたくさん持っているのに1人だけこれでは可哀想なのではないかと。でも、その時、私たちは心に決めました。自分で掘らなかったのだから、その結果をしっかり自分で受け止めさせようと。お母さんも複雑な思いだったと思いますが、子どもの成長を考えてグッと気持ちを抑えてくれました。そして2年間、心の中に貯め込んだ“芋への思い”は、年長児最後のいも掘りで結実したのです」(天野園長)

 実際、今回も年少クラスではあまり掘らなかった子どもがいた。先生が声をかけてもたくさん掘ろうという気持ちにならなかったようだ。しかし、先生や風の谷の親たちは、来年、再来年、子どもたちがどのように成長していくのか、温かく楽しみに見守っているのである。

 最後に卒園児のエピソードを紹介しておこう。彼は日本でも最難関のひとつに数えられる名門私立中学校への合格を果たして、風の谷幼稚園に挨拶に訪れた。

 「受験、たいへんだったでしょ?」

 「うん。でも、いも掘りに比べるとなんてことなかったよ」

※次回の更新は、12月3日(木)を予定しております。

風の谷幼稚園
園長・天野優子氏が、理想の幼児教育を実現するためにゼロから建設に乗り出す。様々な困難を乗り越え、1998年に神奈川県川崎市麻生区に開園。「人間が人間らしく、誇りを持って生きていく」ための教育を実践している。

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