WEDGE REPORT

2016年4月4日

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 シリア政府軍はこのほど、過激派組織「イスラム国」(IS)から中部の要衝、世界遺産都市パルミラを奪回したが、この作戦の裏面でロシアの特殊部隊スペツナズの暗躍があったことが明らかになっている。米国もシリアとイラクにデルタフォースなど特殊部隊を投入してIS指導者の暗殺作戦などを実行しており、両国の特殊部隊の存在があらためてクローズアップされてきた。

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対外情報庁のザルスローン

 パルミラは昨年5月にISに占領された後、ローマ時代の遺跡が破壊されたり、貴重な文化遺産が海外に持ち出されて密売され、それがISの活動資金の一部ともなっていた。3月27日にロシア軍の空爆支援を受けたシリア政府軍が10カ月ぶりに同地を奪回して、ISを撃退した。

 イランの革命防衛隊、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラとともに、この奪回作戦を支援したのが、ロシアの特殊部隊スペツナズだ。プーチン大統領は3月、シリアに介入していたロシア軍を撤退させることを決定、一部の爆撃機などが帰還した。しかしISなどとのテロとの戦いは続行させるとして航空機や部隊を残留させている。

 パルミラの作戦に参加したのは、秘密のベールに包まれた対外情報庁のスペツナズ「ザスローン」やロシアの特殊作戦軍の部隊KSOなどと見られている。「ザスローン」はウクライナ危機にも投入されたといわれる精鋭部隊だ。投入されている部隊の規模は明らかではないが、数百人程度ではないかと見られている。

 米欧メディアなどによると、これらスペツナズの部隊は直接、ISとの戦闘に加わっているほか、ロシア軍機の空爆の正確性を高めるため、地上の標的の場所を特定するスポッター(空爆誘導員)の役割を果たしている。

 ロシア当局者はパルミラの奪回作戦にスペツナズが加わったことを隠そうとしていない。その理由はロシアのシリア介入があくまでもIS攻撃のためであることを国際的に印象付けるためだ。ロシアは5カ月間のシリアでの空爆作戦で、アサド政権に敵対する反体制派を集中的に攻撃し、アサド政権のテコ入れを図った。このため介入の理由として主張した「テロとの戦い」は、実際には介入の口実にすぎない、と批判されてきた。

 スペツナズが戦闘に参加しているという情報はロシアのシリア介入当初からあったが、その目的はチェチェン出身のISの戦争相で、軍司令官のオマル・シシャニを殺害することにあるとされていた。シシャニは3月4日の米軍の空爆で死亡している。ロシアはシリアの行方に影響力を保持するため、スペツナズなど軍事的なプレゼンスを残留させる考えと見られている。

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