ボール紙に画びょうをさしたままで首を横に傾けていた眞由ちゃん。作り方はわかっているようで取り組んではいくのですがまんまるが描けず、手が出せない状態です。
「眞由ちゃんは何に困っているの? 何がわからないの?」そう声をかけると「まんまるに描けないの……」とポツリ。
「じゃあどうして描けないのか見ててあげるね」と、一度自分で描いてみるように言うと、やはり糸を張ることが難しいようなのです。なので、糸を張るということはどういうことなのかがわかるようにと一緒に鉛筆を持って4分の1を描いていきました。
「先生、手を離すからね。ピーンって糸を伸ばすようにしてごらん」
どう言えば伝わるかと、言葉を変えながら何度も何度も描き直し、「切る線が見えなくならないよう線の横を切るんだよ」と伝え、やっとのことでまんまるの円ばんを作り上げたのでした。そのときの喜びようといったらもう!!
帰りの会時にみんなの前で、前日に作った円ばんを見せながら、「これは1枚目。これは2枚目。そしてこれが3枚目!! だんだんきれいになっていって、3枚目は先生が作ったみたいでしょっ!!」と話していくと、なんと3枚目の時に仲間たちから「おーっ! きれーい!!」と拍手が。帰りには、「明日はたくさん作るから、紙いっぱい用意しておいてね!」とうれしそうに言う眞由ちゃんなのでした。
この眞由ちゃん、実はお弁当後に3枚の円ばんを持っていろんな先生に「どれが1番きれいなまんまる?」と聞きにまわっていたようです。“きれいに作れたんだ” そういう思いが次への意欲へとつながっていくことでしょう。 鳥1組 学級通信 「おおばこ」より
今回は風の谷幼稚園の「紙工作」の後編をお伝えする。前編では自分で判断する力のベースとなる「基準作り」を紹介したが、「紙工作」にはまだまだ多くの教育意図が含まれている。このひとつが、冒頭の学級通信からも読み取っていただけるように、「どこがどううまくいかなかったのか」「どうすればうまくいくのか」を自分で考えられるようになること、すなわち「問題は必ず解決できるという思考力」を育てていくことである。
「頑張れ!」って言われても・・・
ここで大切なのは「どこがどううまくいかなかったのか」の“どこが”の部分だ。この“どこが”が明らかになるからこそ、「“どう”すればうまくいくのか」という仮説と見通しを持つことができ、それを検証していけるようになる。
密着レポート第7回でも紹介したように、“どこが”がわからない状態で、ただ「これじゃあダメだ」「頑張れ、頑張れ」と言われただけでは子どもがかえって萎縮してしまうこともある。先生が一人ひとりの子どもと向き合い、子どもごとに個別な「“どこが”どううまくいかなかったのか」を探し出し、気付かせ、「“どう”すればうまくいくのか」をガイドする。その結果として、子どもは自分が努力すべき方向性を見出していくのである。