2024年4月20日(土)

安保激変

2016年5月6日

日豪の認識にあった大きな差

 日豪潜水艦共同開発が幻に終わったのは、日豪双方の目的と認識に大きな差があったからだ。日本が重視していた対中牽制という戦略的利点を豪州は必ずしも重視していなかったし、豪州が抱える国内事情を日本は十分理解していなかった。日本はまた、防衛装備移転三原則の下で、輸出を行うための国内体制が整っていなかった。そして何より、日豪の間で、潜水艦の運用と能力に対する考え方が大きく異なっていたことが大きかった。今回の結果はなるべくしてなったものと受け止めるべきだ。

 日本はまず、今回の失敗に学び、防衛装備輸出に関する国内体制の整備を急ぐべきだ。その上で、実現可能な案件を成功させる必要がある。インドへの救難飛行艇US-2の輸出が1つの候補ではあるが、インド側がコストの高さを問題視している一方、モディ首相の掲げる「Make in India」政策も障害となっているため、早期に実現する見込みは薄い。代わりに哨戒機P-1や輸送機C-2を早期に量産体制に移行させ、これらの輸出を官民一体となって促進する方がより現実的ではないか。

 また、潜水艦共同開発が失敗したからといって、日豪の防衛協力を後退させてはならない。日豪は、情報収集・偵察・監視、ミサイル防衛、水陸両用能力、F35の整備などの面で、まだまだ協力の余地が残っている。精密誘導弾の共同備蓄も検討されるべきだ。また、現在準備されている訪問部隊地位協定が締結されれば、さらなる日豪および日米豪の訓練や演習の機会が増大する。このように日豪関係を強化することによって、地域秩序に対する中国の挑戦により効果的に対処していかなければならない。

  
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