世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月7日

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 ワシントン・ポスト紙コラムニストのアップルバウムと、エコノミスト誌のルーカス上席編集員が、5月6日付ワシントン・ポスト紙掲載の論説において、ロシアが冷戦時代のような悪質なデマ流布作戦を強化していることを警告し、米国もそれに対抗する態勢を整備するべきである、と述べています。論旨は次の通り。

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 15年前は西側メディアの力は強く、外国によるデマ情報が欧州に悪影響を与えることは考えられなかったが(注:その頃のロシアは未だ国力を回復しておらず、対外宣伝力は弱かった)、今はそうではない。西側メディアは以前の力を失い、あらゆる情報がインターネット上に充満して、人々は何が真実なのかわからなくなっている。 

 そのような中で、ロシアや中国のような権威主義体制の国々は西側向け宣伝を強化している。自前のマスコミが弱い欧州の小国では、ロシアのRTやSputnikのようなテレビ放送が影響力を増している。ドイツのような大国でも、インターネットやSNSを通じてロシアのデマが時々力を発揮する。シリア難民がロシアの少女を暴行したとされる件についての、ロシアのプロパガンダがその実例である。

 冷戦時代のソ連の宣伝と異なり、ロシアは自身のイメージ・アップをはかるより、西側政府への信頼、西側諸国のイメージを失墜させる方向でデマを流す。そして、欧州諸国の極右、極左勢力は、これらのプロパガンダから都合のいいものを摘みあげて利用する。

 欧州諸国では、このようなロシアの策動に対抗しようとする動きも出ている。ウクライナではStopFakeがロシアによるプロパガンダを暴露する活動を始めているし、The European Endowment for Democracy(注:アラブの春を受け、ポーランドのイニシャティブで2012年発足。欧州委員会の予算はついておらず、加盟国からの拠出に依存し、これまでに1400万ユーロを集めている)は、ロシア語マスコミの届く範囲と影響力の分析を行った。欧州委員会の対外行動局も、ロシアのプロパガンダについて週報を作成している。NATO諸国はラトビアに、ロシアのデマに対抗するための小規模なセンターを立ち上げた。

 しかし、米国では、冷戦時代のUSIA(米文化情報局)に匹敵するような、十分な態勢はない。ロシアがこの面でどのような活動をしていて、それがどのような効果を発揮しているかについての調査も行われていない。中国がロシアと同種の活動を強化しているだけに、米国も対応を強化するべきである。
15年前なら、西側の自由なマスコミの力で十分以上に対抗できた。しかし、今は、2年前のウクライナと同様に、我々はデマ作戦に対して脆弱である。

出典:Anne Applebaum & Edward Lucas, ‘The danger of Russian disinformation’(Washington Post, May 6, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-danger-of-russian-disinformation/2016/05/06/b31d9718-12d5-11e6-8967-7ac733c56f12_story.html

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