チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月3日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 2016年5月27日に発表されたG7 伊勢志摩首脳宣言の中で、中国が名指しで批判されることはなかった。

 首脳宣言は、ただ、「我々は,東シナ海及び南シナ海における状況を懸念し,紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する」と述べたに過ぎない。中国に対するけん制というよりも、当事国全てに向けられた要求でもある。それにもかかわらず、中国が反発するのはなぜなのだろうか?

日本が議長国を務めた伊勢志摩サミット(写真:代表撮影/ZUMA Press/アフロ)

欧州は中国を「脅威」と認識していない

 宣言は、さらに続けて、「我々は,海洋安全保障に関するG7 外相声明を支持する」という表現を用いている。「海洋安全保障に関するG7外相声明」は、G7伊勢志摩サミットに先立つ4月11日に、G7外相会談において出されたものだ。この時も、中国外交部は敏感に反応している。

 「外相声明」は、「我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を懸念するとともに、紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する」と述べて、南シナ海問題を提起した。「首脳宣言」は、「外相声明」と同様の表現を用いたのである。

 一方、「外相声明」は、「我々は、現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的又は挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明するとともに、すべての国に対し、大規模なものを含む埋立て、拠点構築及びその軍事目的での利用といった行動を自制し、航行及び上空飛行の自由の原則を含む国際法に従って行動するよう要求する」と、さらに突っ込んだ内容になっている。

 この部分について、中国国内でも、中国をけん制しているという見方が多く、反発につながったのだ。しかし、「首脳宣言」ではその内容を繰り返さなかったことからもわかるように、G7は中国を刺激したくなかった。と言うより、そもそも欧州各国は、中国に対する脅威認識を、日本と共有していない。

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