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2016年6月17日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 当初から囁かれていた疑義は2つ。この特殊なマウスを使った理由と、実験デザインが明らかにされていない理由である。

 まずは、ニュース23の池田教授発言を一つ一つ検証してみよう。

池田教授発言検証その1 「明らかに脳に障害が起こっている」のか?

池田修一教授発表資料
(出所)厚生労働省ウェブサイト

 動物実験による研究に詳しい脳科学者である、藤田保健衛生大学の宮川剛教授はこう言う。

「池田班の実験で用いられているNF-κBp50(エヌエフカッパービーピー50)欠損マウスは、何もしないで飼っているだけでも、加齢によって海馬で自然に神経細胞死が生ずることが知られているマウス。ヒトの自己免疫疾患を研究するためのモデルとしての妥当性は現状では不明だ」

 メディアは「脳への自己抗体(IgG)の沈着=脳機能障害」という池田教授の飛躍したロジックにそのまま乗りがちだ。

池田修一教授発表資料 ※拡大画像表示
(出所)厚生労働省ウェブサイト

「しかし……」と宮川教授は続ける。「確認されたとする自己抗体が、ワクチンによるものだという十分な証拠はなく、この沈着がどのような意味をもっているかも全くわからない」。

池田教授発言検証その2 「ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者」と関係あるのか?

 あるワクチン研究の第一人者からもこんな話を聞いた。

 この研究者は、2年前の小児科学会で池田教授に、「ぜひ、患者の少女たちの血液が欲しい。患者にもマウスと同じNF-κBp50の欠損があれば強いエビデンスになる」と頼んだそうだ。

 しかし、「あんなに痛がっている子たちに血をくれなんて言えません」と言って断られたという。

 NF-κBp50は炎症反応において中心的役割を果たす因子の一つであり、これを欠損した人の症状は重く、ワクチン接種年齢まで成長できるとはとても考えられない。

「病気の原因を解明し、治療法を見つけるために行っている研究だと言いながら、なぜヒトのサンプルは調べないのか。そもそも、マウスではNF-κBp50欠損を見ているのに、肝心のヒトの方ではHLA型を見ている理由も分かりません」

池田教授発言検証その3 「共通した客観的所見」なのか?

 前出の宮川教授は、「池田教授が発表した光るマウスの脳画像は、いわゆる“チャンピオンデータ”である可能性が否定できない」と言う。

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