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2016年6月29日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。近著は『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。

 民間の路線バスが廃止されるなど、中山間地域の公共交通網をどう維持していくか悩んでいる自治体は多い。こうした中、住民が運営する乗り合いタクシー「チクタク」の導入が成功、過疎地域の交通網維持で先進的な取り組みをしているとして、全国から多くの見学者が訪れるのが兵庫県豊岡市だ。

 日本海に面した同市は人口8万2000人。国内最後の野生コウノトリの生息地としても有名だ。2005年に近隣の5町と合併したことで、県内で面積が最大の自治体でもある。

 合併された旧但東町や旧出石町は中山間地域が多く、車を運転できない高齢者らの移動手段確保が課題になっていた矢先の08年、市内を走る路線バス26路線のうち11路線が不採算のために廃止になった。このため、代替え交通機関として運送事業者に委託した白ナンバーの市営バス「イナカー」を導入するものの、市が定めた最低需要基準などを満たさなかったため、11年には11路線のうち3路線が廃止された。

 こうした状況下で誕生したのが「チクタク」だ。路線バス廃止後に白ナンバーの市営バスを導入している地域は珍しくないが、豊岡市が注目されるのは、住民が中心となって「チクタク」を運営して成果を出している点だ。

住民が高齢者をドアツードアで送りとどける (TOYOOKACITY)

 現在、旧出石町や旧但東町の4地区で運営されている「チクタク」は、市が国土交通省から許可を得て地元組織に委託する形を取り、7人乗りワンボックスカー(白ナンバー)を無償で各地区に貸し出す。燃料代(実費)、車検代(同)、保険料(同)、運転手当(1人1日3000円)、事務委託料(月2万円)などの運行経費も市が負担。利用者は会員登録した地域の住民だ。週3日の運行で運賃は市条例によって100~200円と決められている。

運転手を地域独自で確保ドアツードアが人気

 道路運送法上、管理監督責任は市にあり、交通事故が起きた際も市が対応するが、詳細なダイヤや停留所の位置は安全確認のために警察の許可を得たうえで、利便性の向上のために地域主導で決める。そして、「イナカー」と最も違う点は、ボランティアに近い運転手を地域独自で確保する点にある。お寺の住職、郵便局員、農家、猟師といった人たちが引き受けてくれ、地域貢献への意識が高い人が多いという。

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