ウォールストリート・ジャーナル紙の6月5日付社説が、北朝鮮を「主要マネー・ロンダリング懸念先」に指定したオバマの対北朝鮮措置について、強制されれば大きな効果がある、オバマは今回本気かもしれない、として措置決定を評価しています。要旨、次の通り。
オバマ政権は北朝鮮を「主要マネー・ロンダリング懸念先」に指定した。これは金融分野で最も強い手段である。これが強制されれば、世界の銀行は北との金融取引を続けるか、米金融システムへのアクセスを維持するかの二者択一を迫られる。金正恩と中国の銀行にとっては難しいことになる。
この措置は時宜に適ったことだ。ミャンマーやイランに対してはこのような包括的な禁止措置を執ってきたが、北には一部の機関や個人に対する制裁しか執ってこなかった。そのため北は外国の銀行と取引を続け、麻薬や通貨偽造、奴隷労働や武器といった闇の市場で獲得した汚い金を動かしてきた。昨年オバマは世界で最も大きな制裁を受けている国家が北朝鮮だと述べたが、それは正しくなかった。しかし今回はそれにコミットしたのかもしれない。
先例は2005年にブッシュ政権が執ったバンコ・デルタ・アジア銀行への制裁措置である。これにより2500万ドルのキム・ファミリーの資産が凍結され、他の銀行は米国の金融システムからの排除を恐れ北との取引を止めた。北は間もなくミサイルの部品や仲介業者への支払いができなくなり、措置の解除を懇願してきた。
ブッシュ政権は国務省のコンドリーザ・ライスとクリストファー・ヒルの強い主張によりバンコ・デルタ・アジア銀行に対する措置を、北朝鮮による非核化の約束と引き換えに、2007年に解除した。しかし予想通り北は約束を反故にした。他方この事例は国際的な金融システムへのアクセスを失うことに対する北のレジームの懸念の大きさを示すことにもなった。
今回の措置の効果は大きいかもしれない。外国の銀行が米のシステムから排除されることになれば、北はバンコ・デルタ・アジアの事例どころではない大きな問題に直面するだろう。
しかし、北の庇護者である中国は米国のシステムに依存しない一部の銀行に北と取引をさせたり、北への援助を強化したりして、米国の措置を阻害することができる。中国は米の今回措置を「一方的措置」であり、制裁は「中国の正当な権利と利益を害する」ことがあってはならないと批判した。
措置の効果は米国がいかに中国を説得できるかにかかっている。その点で今回措置の決定のタイミングは希望をもたらすものである。それは南シナ海を巡り米中の緊張が高まる中、更に年次米中戦略経済対話の直前に、かつ習近平が金正恩の特使と会見した時期に措置が取られたからである。オバマ政権は過去屡々外交日程を考えて強硬措置の決定を躊躇ってきたが、今回は動いた。この措置が今後強制実施されることを希望する。
出典:‘Squeezing Kim Jong Un’s Bankers’(Wall Street Journal, June 5, 2016)
http://www.wsj.com/articles/squeezing-kim-jong-uns-bankers-1465145840
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