今月の旅指南

2010年1月29日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 桃山画壇の巨匠・長谷川等伯(1539~1610年)の代表作といえば、国宝「松林図屏風〔しょうりんずびょうぶ〕」。東京国立博物館で開催される「長谷川等伯展」には、水墨画の最高峰といわれるこの名作のほか、金碧障壁画〔きんぺきしょうへきが〕の傑作や巨大な仏画、肖像画、花鳥画など、さまざまなジャンルの作品が並び、その筆力に改めて驚かされる。

長谷川等伯 「楓図壁貼付」国宝(上) 「松に秋草図屏風」国宝(下) 
ともに京都・智積院蔵

 「等伯は、時の権力者や天下人からの注文に応じ、どんな作品でも描ききりました。今回は、そんな等伯の代表作約80件を集めた、かつてないスケールの回顧展です。能登七尾(〔のとななお〕、石川県)から30歳を過ぎて上洛し、一代で画家の頂点へと上りつめた等伯。展覧会ではその波瀾万丈の生涯もご紹介します」

 と話すのは、同館学芸企画部の松嶋雅人さん。等伯を語るとき、欠かせないのが宿命のライバル・狩野永徳の存在だ。永徳は安土城や大坂城などに金碧障壁画を描いた、名門狩野派の4代目御曹司。一方の等伯は田舎から出てきて実力でのし上がり、やがて豊臣秀吉や千利休らに重用される。

 天正18(1590)年、2人は御所の障壁画制作の受注を巡って競い合う。障壁画制作は結局、永徳が勝ち取るのだが、永徳亡き後、等伯は、秀吉の子、鶴松の菩提寺で、京都一の寺といわれた祥雲寺の障壁画制作を託されることとなる。現在、京都の智積院〔ちしゃくいん〕に伝わるその作品こそ、金碧画の至宝と称えられる「楓図〔かえでず〕」だ。楓に、萩、菊などの草花が優しく画面を彩る障壁画は、華麗にして叙情的。狩野派の作品とはひと味違う、装飾的な美しさが魅力だ。

 桃山の天才絵師が残した傑作の数々と、作品にまつわる数奇なドラマ。400年前の世界にひととき身を置いてみてはどうだろう。

 
 
 
 

没後400年 特別展 長谷川等伯
東京都台東区・東京国立博物館(山手線上野駅下車) 
※2010/4/10~5/9まで京都国立博物館で巡回展
〈問〉03(5777)8600
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00

◆「ひととき」2010年2月号より


 

 


 

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