世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月2日

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 Diplomat誌のティエッツィ編集長が、6月26日付同誌論説にて、中国による両岸交流停止発表の経緯を紹介し、両岸の対話チャネルの欠如は危険なことである、と批判しています。要旨、以下の通り。

1992年コンセンサス

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 1月20日の台湾総統選よりかなり前から、中国は「1992年コンセンサス」が両岸関係の基本線であるとして、蔡英文と民進党が1992年コンセンサスを認めないならば交流を停止する、と暗に脅してきた。

 共産党・国民党間の1992年コンセンサスは、中台は一つの中国を認めつつ、双方が自らを「中国」と位置づけ得る曖昧さがある。しかし、民進党はこの定式化を認めず、蔡英文は選挙戦を通じて中国からの強い圧力に抵抗してきた。蔡英文は、両岸の代表者が「1992年対話」を持った歴史的事実は何度も認めたが、同対話については「共通の土俵を模索するために相違を脇に措くとの共通認識があった」としている。

 5月20日の就任演説で蔡英文は、「1992年対話」、中華民国憲法の秩序、従来の両岸の交渉と交流、台湾人の意思に基づく両岸関係の処理を提案した。それは中国にとり全く不十分だった。国務院台湾事務弁公室(TAO)は、一つの中国の原理を認めることによってのみ両岸の継続的で組織的な交流は続き得る、と繰り返し脅した。6月25日、TAOの安峰山報道官は、「5月20日以降、台湾側が1992年コンセンサスを認めないので、両岸の交流メカニズムは既に停止されている」と述べた。蔡政権が1992年コンセンサスを支持するまでは、両岸の対話チャンネルは無くなるということである。

 中国の発表は、明らかに裏目に出ている。民進党の呉秉叡幹事長は、中国は1992年コンセンサスをめぐり台湾を恫喝した、と非難した。呉幹事長は、台湾の有権者は蔡英文を選ぶことで1992年コンセンサスを拒否したのであり、中国の要求は台湾人の決意を強化させるだけであろう、と言っている。

 両岸の公式な交流メカニズムの停止は関係を10年近く前の状態に戻すものだが、両岸の対話メカニズムの欠如は、経済、教育、人的交流が急増している今日、破滅的結果を秘めている。今般の中国の動きは、起こり得るセンシティブな問題を議論する窓口をなくすことになり、双方が対処できないような、両岸関係へのダメージが起こり得る。

出典:Shannon Tiezzi,‘Did China Just Kill Cross-Strait Relations?’(The Diplomat, June 26, 2016)
http://thediplomat.com/2016/06/did-china-just-kill-cross-strait-relations/

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