2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月11日

 この論説は、西側民主主義陣営の指導者として、米国大統領が言うべきことを言ったもので、評価できます。難民問題で引き裂かれ、英国のEU離脱で分裂し、金融・経済の不確実性に見舞われ、各国で極右勢力が力を得、EU統合の理念に疑問が提起される中で、オバマ大統領が共通の価値で結ばれた大西洋同盟の団結を呼びかけ、その強靭性についての信念を表明したことは歓迎されます。

分裂はプーチンを利する

 英国のEU離脱を含む欧州の問題は、冷戦後、フランシス・フクヤマが「歴史の終わり」で宣言した自由民主主義の最終的勝利との命題を、否定するような様相を呈してきています。中露が代表する権威主義的な、不自由ではあるが効率的な政治のあり方が有利になってきているとの論説も多いです。主として米国が作ったリベラルな国際秩序が退潮しているとの論も多くあります。欧州の混迷、分裂は、ロシアのプーチン大統領を大きく利するものです。

 しかし、自由民主主義陣営の混乱が少し大げさに論じられ過ぎている感は否めません。経済の面でも、多くの国にとってのあるべき姿を示していますし、ソフト・パワーの面でも、自由民主主義陣営は今なお相当に強靭であると判断して間違いないでしょう。変化に目を奪われがちになるのは人の常ではありますが、オバマ大統領が言うように、変わっていることのほかに変わっていないことを想起することも大切です。西側や自由民主主義陣営の没落の予言は当たらないでしょう。

 今の時点でオバマ大統領が西側の団結と力への自覚を呼びかけたのは、時宜を得ています。実際、NATO首脳会合では、4000人の移動部隊が新設される等で合意がなされ、団結を謳い上げるなど、オバマ大統領の言うような結果になりました。
 


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