世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月12日

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 今回のフィリピンと中国の紛争に関する仲裁裁判所の判決は、中国の南シナ海でのいわゆる9段線に基づく管轄権主張を国際法上根拠がないと断じ、人工島を基盤にEEZなどの海洋権益を主張することはできないとしています。

 この判決は比と中国との係争にかかわるだけではなく、南シナ海での中国の主張を全体的に否定するものです。また、航行の自由など、比以外の国、国際社会全体の利益にもかかわるものです。

国際秩序への挑戦

 さらに、この論説でフォーブスが論じているように、中国がどうするかは中国の国際法に対する姿勢、ひいては国際秩序に対する姿勢を判断する大きな材料になります。中国は、判決の受け入れを拒否し、南シナ海は歴史的に中国の領土という議論を展開し、比に働きかけてこの仲裁判断のインパクトを弱め、問題を矮小化しようとするでしょう。それが成功するか否かは、比の対応もさることながら、米、日、越、印、さらに欧州諸国が今後どういう対応をしていくかによります。

 この判決を無視することは現在の国際法秩序に挑戦することです、紛争の平和的解決の原則に反するものであるとして、議論をしていくことが肝要です。それがこの地域で「力ではなく、ルールによる国際秩序」を守っていくために必要であり、中国による「拡張主義」を抑えていくことにつながるでしょう。

 この判決で好都合な機会が出てきたと思われます。十全にこの機会を利用すべきです。中国が反発し、南シナ海でADIZ設定をするような場合、直ちにそれを無効化するような行動を取るべきです。緊張の激化を恐れると、より悪い緊張が出てくるでしょう。

  
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