2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月12日

 米下院軍事委員会シーパワー・戦力投射小委員会のランディ・フォーブス委員長(共和党)が、National Interest誌ウェブサイトに7月12日付で「ハーグは中国に対し判決を下した。それを執行する時である」との論説を寄せ、南シナ海仲裁裁判所の判決を中国が無視すれば、強硬に対応すべし、と論じています。フォーブスの論旨、次の通り。

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力は正義と考える北京

 7月12日の比・中間の領土紛争についての仲裁裁判所の判決は、中国がどう反応するかによって、アジアの安全保障と戦後のリベラルな国際秩序のあり方に大きな影響を与える。第2次大戦後、米などは紛争の平和的解決、国際法順守、強制力の使用を拒否する国際的枠組みを作ってきた。この秩序は中国とアジア・太平洋の繁栄に力強く貢献した。

 中国は「責任ある利害関係者」になりたいと言ってきたが、中国の最近の行動はソ連崩壊後、この秩序に対する最も深刻な脅威になっている。中国の経済力、拡大する軍事力、常に他国の侵略意図の被害者であったとの主張は、国際システムに特に困難な問題を提起する。東シナ海から南シナ海、インドとの陸上国境において、中国は力により現場の状況を変えようとしている。南シナ海での人口島建設、東シナ海での不法な防空識別圏設定、インドのアルナチャル・プラデッシュでの挑発など、領土問題が先鋭化している。北京は国際政治では「力は正義」との考え方をとっていることを示してきた。

 判決は北京への基本的な叱責である。フィリピンが海洋法の裁判所に提訴したことは、戦後世界で米やパートナーを活気づけた原則や価値と軌を一つにしている。小さなフィリピンが巨大な中国に対し、国際法に基づき訴訟を起こし成功することは、中国の元外相の中国の行動を正当化する有名な発言、「中国は大きな国で、他の国は小さな国である。これは事実である」に対する反論でもある。

 中国がこの判決を無視すれば、中国は国際社会の建設的メンバーとして行動するとの約束の空虚さを一挙に示すことになる。しかしそれは同時に、世界第2の経済力、最大の軍を持つ国が、紛争の平和的解決を含むリベラルな国際秩序を公に反駁し、国際秩序自体に大きな脅威を与えることになる。国際安全保障への影響は大きい。米は中国による判決の拒否、あるいはマニラとの紛争の軍事的解決追求に対し、準備し、強い決意をする時である。最近、2個の空母打撃群を地域に送ったのは適切であった。もし中国が思慮のない行動をすれば、米は同盟国の側に立ち、侵略に抵抗し、我々の価値を守ることに何の疑問もないようにすべきである。

 この判決は戦後の国際秩序の価値と中国の修正主義の衝突という点で、中国の台頭の歴史の屈折点である。中国がどう反応するかは中国の問題である。しかし米はただ一つの選択肢しか持たない。フィリピンや地域の友人と共に、普遍的価値および軍やGDPの規模にかかわらずどの国も法の上に立たないとの信念を擁護するということである。

出典:J. Randy Forbes,‘The Hague Has Ruled against China. Time to Enforce It.’(National Interest、July 12, 2016)
http://nationalinterest.org/feature/the-hague-has-ruled-against-china-time-enforce-it-16939


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