オトナの教養 週末の一冊

2016年8月26日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 文部科学省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に所属する若き女性事務官・水鏡瑞希が、卓抜した推理力で次々と研究不正を暴く……。松岡圭祐の小説『水鏡推理』シリーズが売れているらしい。

 私も、最新刊の『水鏡推理Ⅲ』まで早々に読んだ。STAP細胞事件をはじめ、最近起きた東京五輪エンブレム騒動や、過去の旧石器発掘事件などをモデルに、痛快な推理小説に仕立てている。

 小説なら楽しめるが、現実に起きた不正となるとそうはいかない。2014年のSTAP細胞事件とノバルティス事件は記憶に新しいが、本書によると、これらは氷山の一角に過ぎない。日本は世界に冠たる「研究不正大国」だというのだ。

量だけでなく、質においても世界の注目を集める

『研究不正 ―科学者の捏造、改竄、盗用』(黒木登志夫 著、中央公論新社)

 研究不正や誤った実験などにより撤回された論文のワースト10に日本人が2人、ワースト30には5人も名を連ねている。他を圧倒するようなワースト1位も、実は日本人である。

 STAP細胞とノバルティス事件という二つの研究不正により、「わが国は、量だけでなく、研究不正の質においても世界の注目を集めた」と、著者は語る。

 <STAP細胞は、ねつ造、改ざん、盗用の重大研究不正をすべて目いっぱい詰めこんだ細胞であった。はなばなしい発表からわずか11ヶ月で、そのような細胞が存在しなかったことが明らかになり、わが国の名誉を傷つけた末に、消えていった。ノバルティス事件は、わが国の臨床医学の構造上の問題を内包しているという点で、STAP細胞よりもはるかに深刻な研究不正であった。>

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