世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月1日

 フィナンシャル・タイムズ紙の7月29日付社説が、メイ英首相がヒンクリーポイント原発計画の承認を遅らせる決定をしたことは、計画を超えて英中関係に影響を与える、と述べています。

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 計画には中国の国家原子力公社(CNNC)と広東原子力(CGN)が資本金の33.5%を出資する。これは昨年の習近平の訪英時に発表された英中関係の「黄金時代」の要となるものであり、キャメロン首相の主要な外交政策の一つであった。

 計画については、当初から経済性が問題視され、計画を主導するフランスの原子力会社(EDF)ですら、計画のリスクについて社内の見解が分かれている。そのうえ英国政府は、原子力のような機微な分野に中国が投資することで、将来中国からエネルギー分野で脅されることにならないか懸念している。
計画の遅れは、すでに問題のある英仏関係を複雑にする要因となろう。フランスにとって、フィンランドとフランス国内に建設中の同じ技術の原発が幾多の問題を起こしている手前、EDFがヒンクリーポイントに建設する原発が問題ないことを示すことが至上命令である。フランスの原子力産業にとって、ドイツと日本に頼れない以上、英国への輸出は重要である。

 中国にとっても、計画は戦略的に重要である。もし計画が頓挫すれば、中国の野心にとって大きな打撃となり、「黄金時代」が誇張であったことが分かり、英中の外交関係の後退を意味するのみならず、中国の他の商談を危うくしかねない。

 計画の中止は中国では習近平自身への平手打ちと見られるだろう。CNNCは習の権力基盤の一つの産軍共同体である。大型のインフラの建設により世界中で外交上の友人を作るという習の戦略は影響を受けるだろう。

 しかしこのような戦略考慮があるからといって、計画が英国の納税者にとっていい取引になるわけではない。当初計画が提案されたときは、ヒンクリーポイント原発の電力料金は、他と比して競争力があり、財政にさして負担をかけることなく、温室効果ガス規制をクリアすると考えられていた。

 十年後、建設費はほぼ4倍となった。天然ガス、太陽光、風力発電のコストは下がっている。英国の競争力が問われる。この点だけから言っても、一休止して厳しい再検討をするのが賢明である。

出典:‘Hinkley Point presents cost and security issues’(Financial Times, July 29, 2016)
http://www.ft.com/cms/s/0/dd5d7fa8-557d-11e6-befd-2fc0c26b3c60.html#axzz4G3Jfds2e

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