ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年2月16日

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小さな頃から集めていた辞書は、なんと100冊にも及ぶ。
索引研究や図書館情報学、翻訳など、本とことばをめぐって
さまざまな研究を続けている影浦氏の願いは、
言葉がもつ匂いや味わいを伝えていくこと。

高井(以下、●印) 中学時代に辞書を100冊近く集めていたそうですね。

影浦(以下「——」) 辞書の種類は問わず、言葉の意味を引いて楽しんでいました。『大言海』(大槻文彦編、冨山房)、戦前の漢和辞典、俗語辞典。僕が育った札幌の古書店には、まだ古い辞書が出ていたんです。なかでも気に入っていたのは上田萬年〔かずとし〕という国語学者が編者を務めた『大字典』(講談社)かな。

 あとは、辞書の匂いも好きでした。『クラウン仏和辞典』(三省堂)はアマニ油のにおいがして。寝るときにふとんに持ち込む辞書を選ぶのは、喜びのひとときでした。中学の頃には、本の表紙を取り替えて、自分で製本し直したこともありますよ。

●辞書のどのへんに惹かれていたんですか?

研究室でインタビューに答える影浦氏

――たとえば、ちょっと汚いけど「糞汁〔ふんじゅう〕」という言葉がありますよね。「米」が「異」なるものになった「汁」と書くわけです。さらにこれを『大字典』で引くと、単に「くそのしる」と書いてある。この説明はとても簡素で、語義説明にはなっていないかもしれない。でも、そう書かれたものを読んだとたん、「ふんじふ」という言葉が匂いをもって立ち現われてくる。人は意味のわからない言葉に出会うと辞書を引くけれど、そこにあるのは「意味」じゃなくて「言葉」が書かれているだけです。

 一方、紙に印刷された言葉は黒いインクのシミにすぎない、とも言えますが、言葉の生々しい匂いや、神秘的な生命力を感じられることがあります。

●札幌の高校を出て、東大の図書館情報学に進まれたきっかけといいますと?

――あまりこだわりはありませんでした。姉と雑談しているときに、図書館情報学というものがあると知りましてね。聞いたこともなかったんですが、本が好きならなんでもできる、と聞いて、それでなんとなく。

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