WEDGE REPORT

2016年9月16日

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 外務省資料に記載された日本人や企業が被害を受けた爆弾テロの12の事例を峻別すると、“狙われた”ものは、1995年に起こったモスクワの日本料理店のトイレに仕掛けられた爆弾が爆発(負傷者なし)した事件のみ。残り11件は、欧米権益などを狙った爆弾テロに日本人が“巻き込まれた”ものだ。そして、モスクワの事件にしても、日本権益を狙ったものであるか否かは、実ははっきりしていない。

 “狙われた”ものであれば、適切な対策を自発的にとることで避けることもできるし、あるいは「撤退」という最終決断を下すこともあり得る。しかし、“巻き込まれた”ものであれば、「君子危うきに近寄らず」というリスク回避の基本原則で行動したとしても、運悪く遭遇してしまうこともある。むしろ、日本人のテロ被害者の多くは、運悪く巻き込まれてしまったのだ。

 危機管理責任者の貴方がなすべきことは、海外駐在員や家族を狙う“標的型テロ”の類型や手段を知り、それを防ぐ、あるいは回避する対策をとること。運という不確定要素が支配する“巻き込まれ型テロ”については、駐在員たちにリスク回避の基本原則を意識して行動してもらうしかない。

日本人を狙うテロは「誘拐」

 今年5月に公安調査庁が公表した『国際テロリズム要覧』によれば、欧米における「ホームグロウン・テロリスト」や帰国した「外国人戦闘員」の存在により、中東やアフリカのみならず、世界中で国際テロの脅威が増大しているという。このように、世界中がテロ危険地帯となった現在だからこそ、国際テロ組織が、「なぜテロを起こすのか」という発火点を見つめ直す必要がある。

 国際テロ組織における「テロ」とは、企業における事業と同じく、成果を上げれば資金を呼び込み、組織を拡大できる活動だ。アルカイダが衰退し、ISが台頭した大きな要因は、米国主導の対テロ戦争の結果、活動を締め上げられたアルカイダがテロを起こすことができず、支援者からの資金提供が減少したからだといわれる。テロは、何も思想信条を具現化するためだけではなく、資金獲得のためのPR事業という側面もあるのだ。このため近年のテロの特徴は、「テロによる目的の完遂」よりも「テロ自体が目的」となっている。

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