2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年2月17日

八百長、賭博・・・中国サッカー界は不祥事だらけ

 中国のサッカー界が抱える事情が大きく影響したと指摘するのは、国務院のOGで現在は日本のメディアで働く女性だ。

 「今回の対日本戦で中国の多くの人々は、実は、中国チームが敗れることを望んでいたのです。もともと試合前の予測では3対0で中国が負けるとされていましたから、正確にはそれ以上の大差で大敗することを望んでいたのです。その理由はズバリ、いまのサッカー協会を含めた執行部の人心を一新するきっかけがほしかったのです。逆にいえば、それほどいまのサッカー協会は腐っているのです。

 いまの中国では連日、サッカーに関する不祥事のニュースが流され混乱しています。八百長問題にはじまり、賭博、収賄事件などで逮捕された協会幹部もすでに10人を超えています。最近では現役代表監督の親しい人物まで逮捕され、いよいよ監督もか、といわれているほどなのです。実際には、代表チームの強化以前の問題なのです。だからこそ、今回の日本の対応の悪さも、協会はとにかく騒ぎにしないでほしいと記者たちに懇願して問題にフタをしたというのが真相です」

サッカーは人気スポーツだからこそ低迷する?

 本来、サッカーのような人気スポーツで中国がいつまでも低迷していることの方が不自然である。国家の威信をかけたオリンピックで金メダルを量産した国であれば、同じ公式をサッカーにあてはめ、資源を集中して投入すればよいはずだからだ。

 だが、むしろサッカーが人気スポーツだからこそ、中国代表チームの戦績低迷が続いていると解説するのは北京の経営コンサルタントだ。

 「人気があるから金が集まる。しかし、それがかえってさまざまな問題を生んでしまうのが中国社会の一つの縮図でもあるのです。110メートルハードルで金メダルを取った中国の英雄・劉翔が北京オリンピックでレースを棄権したときも彼のサポートチームが槍玉にあげられましたが、裏にはCMやイベントなどが目白押しとなりスケジュール的に無理をさせたという事情が取り沙汰されました。儲かるものには人が群がり、寄ってたかって食い物にする。各地の有力者は、『あそこで走ったなら、ここでも走れ』といい、コーチは賄賂のために選手に無理を強いる。チームの目標より個々人の欲望が優先されるのです。これは中国にブランドが育たない構造と同じです。一つのヒット商品が生まれるとすぐにニセモノが市場に氾濫し、最終的にどれが本物か分からなくなって商品の価値が下がる。ついには本物が市場から排除される。その繰り返しです」

 中国を覆っている逆選択の理論が、サッカー界にも形を変えて及んでいる。これも中国が成長を続ける上でぶつかる大きな壁の一つなのだ。

 

※次回の更新は、2月24日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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