チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年9月27日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 しかも、今回の中ロ海軍合同演習は、中国がことさらに島嶼奪還などを強調していて、挑発的である。中国メディアは、中ロ両軍の陸戦隊が初めて演習に参加したことを報じ、島嶼奪還の演練を行ったとしている。また、中国国防部は、最新の904A型総合補給艦を、「島嶼補給艦」と呼んでいる。南シナ海における米海軍の「航行の自由」作戦等に反発し、中国の主張に逆らう行動をすれば、軍事衝突も辞さないという構えを見せているのだ。

 海上だけでなく、陸上の会議等の場においても、米国と中国は、南シナ海における軍事行動について、つばぜり合いを繰り返している。7月16日には、中国人民解放軍連合参謀部副参謀長の孫建国上将が、中国の大学が北京で開催したフォーラムでのスピーチにおいて、米国などが南シナ海で実施している航行の自由に基づく艦艇の行動は「危険な状態を招く」可能性があると警告した。

 これに対応するかのように、7月26日、マーク・リチャードソン米海軍作戦部長が、中国訪問を終えて帰国し、「中国に対し、米国が今後も南シナ海の上空と海上での活動を続ける姿勢を断固として示した」と述べた。その上で、南シナ海に関する仲裁裁判所の判決を受けて、米国は今後も南シナ海における「航行の自由」作戦を継続すると言明している。

クリミア併合がもたらしたもの

 ところが、一方のロシアは、これまで、一貫して積極的に中国を支持し米国をけん制してきた訳ではない。中ロ両国が対米けん制で協力姿勢を強調する「海上連合」合同演習における協力のバランスは、変化しているのだ。中国およびロシアの情勢認識の変化が、合同演習の性格に影響を及ぼしているのである。

 「海上連合」合同演習は、2014年に大きな転換点を迎えた。これは、主としてロシアの都合によるものだ。欧州諸国が「実質的な武力侵攻」と呼ぶ、ロシアによるウクライナのクリミア半島併合によって、ロシアが西の欧州側でのゲームに失敗し、東のアジア太平洋地域で新たなゲームを始めたことに起因する。

 ロシアは、2013年まで、対米けん制のために中国に利用されることに消極的だった。ロシアにとってメリットが十分でなかったのだ。ウクライナ問題によって、欧州との経済協力による第三極としての生き残りに失敗したロシアは、アジアにおいて米中対峙に目を付ける。米中両大国が対峙してくれれば、ロシアが生き残る空間が広くなる。東シナ海で実施された2014年の「海上連合」合同演習の開幕式には、別の会議に出席するために上海を訪れていたプーチン大統領が習近平主席とともに出席し、スピーチまで行っている。

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