チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年9月27日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 2013年の「海上連合」合同演習は、演習海域が日本海のロシア寄りの海域に設定されており、東シナ海に設定するよりも、日米に対して刺激が少なかったにもかかわらず、ロシア側の消極的な態度によって、合同演習の実施がなかなか公式発表できなかった。この2014年のロシアの極めて積極的な対中協力姿勢への変化は、180度の方向転換と言っても良いほどの大きな変化である。

 2015年には、初めて、1年に2回、「海上連合」合同演習を実施した。第1回の演習海域は地中海、第2回は日本海である。第1回の演習は、主として、中国がロシアに対して協力姿勢を見せたと言われる。中東及び欧州に対して、ロシアが、中国の協力を得て、その軍事プレゼンスを示したかったのだ。

 しかし、中国にとってもメリットがあった。中東は、中国が掲げる「一帯一路」イニシアティブの地理的及び意義的な中心であり、欧州は、「一帯一路」の終点であると位置付けられているからだ。中国は、今後、これらの地域において、米国との軍事プレゼンス競争をしなければならず、中東及び欧州からの海上輸送路も保護しなければならないと考えている。中東情勢が米ロだけの軍事的なゲームで動くのではなく、中国もプレイヤーとして関わっていることを示そうとしたのである。

どうしてもロシアの協力を得たい中国

 2016年に入って、南シナ海における米中の軍事的な緊張はさらなる高まりを見せる。7月12日に、常設仲裁裁判所が下した司法判断は、中国の南シナ海における主張を全面的に否定するものであった。しかし、「司法判断」が出される以前から、中国は一貫してこれを無視する構えを見せてきた。「司法判断」が下される直前の7月6日、戴秉国元国務委員が国際会議でこれを「紙屑」と呼び、同じ日に王毅外交部長(日本で言う外務大臣)はケリー国務長官との電話会談で仲裁裁判所の判断を「茶番劇」と切り捨てた。

 中国は、仲裁裁判所の判決には従わないと宣言しているのだ。南シナ海の実質的な領海化を、人工島の軍事拠点化という手段を以て進めるという意味である。しかし、G7でも、中国を非難するかのような共同声明が出されるなど、米国や日本、さらには西欧諸国も、南シナ海における中国の行動に懸念を示している。そして、米中両海軍は、南シナ海における行動をエスカレートさせているかに見える。

 中国外交部は、世界約70カ国が、あるいは90カ国余りの国の230以上の政党が、南シナ海における中国の立場を支持していると主張している。中国が、国際社会から孤立していないことを強調しようとするのだ。国際社会の支持を失えば、「国際秩序を変える」という中国の目標達成などおぼつかない。しかし、中国が主張する約70カ国のほとんどが発展途上の小国である。「国際関係は大国間のゲームである」と考える中国にとっては、非常に心もとない。相手にするのが、既得権益を有し大きな影響力を持つ、欧米先進諸国や日本だからだ。

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