前向きに読み解く経済の裏側

2016年10月17日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 バブルというと、株価や地価が高騰し、ファンダメンタルズ(経済の実体)から説明がつかないような価格で取引されるようになる、というイメージですが、もしかすると、そうでないバブルもあるのかもしれません。現在、地方で進行中の貸家建設のような。今回は、価格の高騰しないバブルについて考えてみましょう。

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マンション価格の果てしない上昇は考えにくい

 1980年代のバブルは、株価と地価でした。株価も地価も、「適正な価格」が把握しにくいので、果てしなく上昇する可能性があります。株価にはPERやPBRがありますが、当時は「21世紀は日本の時代なので、現在の収益等から適正株価を判断すべきではない」「土地が値上がりするのだから、土地を持っている企業の株は値上がりするのが当然だ」ということだったので、PERやPBRはあまり意識されなかったのです。

 最近では、都心のマンション価格が高騰していて、バブルの匂いがしています。ただ、マンションのバブルが土地のバブルと異なるのは、適正価格が明確なことです。新築マンションの適正価格は用地取得費と建設費ですから、容易に算出できます。多少の上振れはあったとしても、果てしない上昇は考えにくいでしょう。

 現に、都心のマンション価格は4割程度上昇したと言われていますが、すでに売れ行きが落ちているので、価格高騰を期待した買いが続くとも思われません。建築費が高騰したこともあり、新規供給も減っています。そう考えると、都心のマンションが仮にバブルで、それが崩壊したとしても、影響は限定的だということになります。

 4割値上がりしたものが元に戻ったとしても、高値掴みした人が破産する可能性は小さいでしょう。仮に価格が暴落したとしても、遠からず戻るでしょう。価格が暴落すれば新規の建設が止まる一方で、都心のマンションには一定の需要があるからです。

地方の貸家は、供給過剰が永続する可能性

 最近、貸家の建設が増えています。相続税が増税されたことで土地を持っている高齢者が相続税対策に貸し家を建設していること、マイナス金利により銀行が貸出を一層積極化していること、の相乗効果であると思われます。

 貸家は、値上がりしません。都心のマンションよりも、さらに価格が安定しています。従って、これを「バブル」と呼ぶべきか否か、迷うところですが、価値に比べて価格が高過ぎるという意味で、バブルと呼ぶべきだと考えています。

 貸家の価値は、将来の家賃収入で決まります。将来の家賃収入が減る可能性が高く、建設費が回収できない可能性が高いのに、大量の貸家が建設され続けているとすれば、それはバブルでしょう。

 日本は、人口が減って行きます。とくに地方の人口は減って行きます。さらに言えば、新規に貸し家に入居するのは若者なので、若者の比率が低く、新規入居者が少ない地域で新たに貸し家が建設されるのは大変危険なことです。

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