なぜ世界はEVに向かうのか
日本では日産自動車と三菱自動車がEVを手がけているものの、売れ筋はハイブリッド(HV)だ。今年1月から6月の乗用車ランキングの1位はプリウスで14万台、2位はアクアで9万台とハイブリッドが1、2位を占めている。
今年度の4月から6月の販売台数では、乗用車総計が62万7000台、うちHVは25万4000台と40%以上を占めている。PHVは1600台、0.3%、EVは2500台、0.4%、燃料電池車(FCV)は144台、0.02%しかない。
自動車は基幹産業であり、関連する産業も多く、雇用に占める比率も大きい。日本自動車工業会によると、製造出荷額は約53兆円、製造業出荷額に占める比率は17.5%、雇用は製造と資材部門で120万人、販売・整備部門で100万人を超えている。日本経済を支える産業だ。
自動車を手掛けている国は、当然ながら自動車産業の強化に熱心だ。このためか、世界ではEVを次世代自動車の主流にする動きが顕著だ。EVであれば電源構成次第とはいえ、大半の国でCO2排出量が少なくなることもこの動きを後押ししている。日本のメーカーが得意とするHVと比較すればEVは部品数も少なく製造は容易だ。EVを次世代自動車の中心とすることができれば、EV車を多く手がけている国が世界市場の覇権を握れるチャンスがある。
中国が政策支援によりEV生産台数世界一になり(『世界一の電気自動車大国になった中国 EVが次世代自動車の主役になるのか?』)EVに力を入れる米中の動きを報告したが、ここに来て韓国もEV市場に力を入れるなどEVを巡る競争は激化してきた。
EVに搭載されるバッテリーの能力を上げ、コストを下げることができれば、市場の覇権を握ることができる。さらに、EVに使用されるバッテリーを転用すれば、太陽光、風力発電など、お天気任せでいつも発電できない再エネの電気を上手に利用することも可能になる。EV市場だけではなく、再エネ用の蓄電設備の巨大市場も視野に入ってくる。